多くの犬に発症する失明に至る遺伝病、進行性網膜萎縮症(PRA)

文:尾形聡子


[photo by Tetsuji Yamada]

今回、犬の進行性網膜萎縮症(PRA:progressive retinal atrophy)についての記事を書こうと思ったのは、日本でも人気犬種のシェットランド・シープドッグに新たなPRA発症の原因遺伝子が見つかったという2021年の報告を目にしたためです。犬の遺伝病の中でも病名がよく知られているものの一つ、PRAは、非常に多くの犬に発症する可能性があります。

網膜変性疾患のひとつ、進行性網膜萎縮症PRA

人と犬は遺伝子変異が原因となる病気の多くを共通して発症します。そのひとつが網膜変性に関連する病気で、そのような病気を総称して「遺伝性網膜変性あるいは遺伝性網膜ジストロフィ(IRD:inherited retinal degeneration/ inherited retinal dystorophy)と言います。

人のIRDの発症に関連する遺伝子は289個同定されていますが(2022年11月現在、RetNetより)それでもまだIRDのすべての原因がわからないのが現状です。人のIRDには、網膜色素変性症(RP:retinitis pigmentosa)やアッシャー症候群、黄斑ジストロフィ、レーバー(レーベル)先天性黒内障などさまざまな病気が含まれています。その中の網膜色素変性症と似た症状、桿体細胞の進行性の変性を最初の特徴とすること、発症年齢や進行具合、重症度は異なるものの、最終的に失明に至るという症状を呈するのが、犬の進行性網膜萎縮症(以下、PRA)です。

桿体細胞は

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