子犬から思春期を経て成犬へ〜飼い主の感情はどう変化していくか?

文:尾形聡子


[Image by Brigitte Werner from Pixabay]

家庭犬に広く見られる問題行動。とある行動に対して問題ありと認識するのは通常、一緒に暮らす飼い主です。しかし、問題行動のみならず病的な行動を示していたとしても、飼い主の知識がなければそれに対応することができません。たとえば尻尾追い行動。犬が自らの尻尾を追いかけてぐるぐる回り続けるという行動がありますが、このような反復行動を飼い主が問題だと思わなければ病気の可能性は置き去りにされ、むしろ「かわいい」「おもしろい」という感想を抱くにとどまることになりかねません。飼い主が犬の行動を適切に理解できていないと、犬の福祉や生活の質に直接的に影響を及ぼす可能性があるのです。

犬の行動は子犬から成犬へと成長していくにつれて変化していきます。その途中にあるのが思春期です。犬にも思春期があり、脳の成長やホルモンの変化が急速に進み行動の変化が起こることは近年の研究でようやく実証されましたが(程度には個体差があります)、そのような成長過程の犬の行動の変化に対する理解が及ばないことが飼い主と犬との間の絆形成をさまたげ、飼育放棄につながる原因のひとつであると考えられています。

藤田りか子さんの「これが犬の思春期だ!その1」にも書かれているように、実際、犬の保護施設に引き渡される犬の多くが2〜3歳までの犬であり、思春期との関連性もうかがえます。逆に、犬の思春期に行動の変化が起こることを飼い主が認識していれば、犬との関係性が思わぬ方向に悪化してしまう可能性を回避できるとも言えるでしょう。文末の関連記事に思春期に見られる行動の変化、それへの対応方法などを紹介している記事をピックアップしてありますので、気になる方はぜひあわせてご一読ください。

先ほど犬の思春期があることがようやく科学的に示されたと書きましたが、そうは言っても犬の思春期に関する研究は非常に少ないのが現状です。そこで、英国のブリストル大学と犬の保護施設Dog Trustの研究者らは犬の福祉低下、さらには飼育放棄を減らすには犬の行動、特に思春期の行動変化に対する飼い主の認識についてもっと理解しておく必要があると考えました。研究者らは、

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