スウェーデン人にとって犬と暮らしやすい町とは?

文と写真:藤田りか子


今年の5月、ということでちょいと前の話になるのだが、スウェーデンの動物保険会社Agria(アグリア)によって犬の飼い主にとってのベスト自治体(コミューン)調査が行われた。自分が住んでいる自治体が犬と暮らす上でどれだけ住み心地がいいか、を各々の項目について点数をつけ、それをランキングにして表した。

日本に比べるとスウェーデンなんだからどこにいっても犬とその飼い主にとって町は住みやすいに決まっていると思われるかもしれない。が、意外にランクははっきりとしたものになった。スウェーデン全国290のコミューンで、平均点数が3点(最高は6点)以上獲得したのはたったの40コミューンほど。一位はヴァルベリーコミューンで4.6点。

さてスウェーデン人にとって何が犬暮らしのしやすい町なのか、今後の日本におけるまちづくりに参考になるかもしれないのでここに紹介しよう。

① 森や自然が近くにある

犬と暮らしているのであれば、自然の中で犬と散歩したい。これが多くのスウェーデン人飼い主の願い。やはり都会のアスファルトだけの環境で犬とは暮らしたくないというのが本音だろう。とはいえ、一位になったヴァルベリーコミューンでは、たとえば海水浴地域では5月から8月末日まで犬連れ込みが禁止のところがほとんどだ。自然だからといってやみくもに犬を連れてきていいというわけではない。でも一年を通して犬を連れてきてもいいという砂浜もコミューンにただ一つもうけられている。

② 犬をトレーニングしたりしつけをするコースへのアクセスがある

これはなんともスウェーデンらしい評価の仕方ではないだろうか。やはり犬暮らしをするのであれば、子犬の頃にパピー教室に通ったり、新しいドッグスポーツを学べる機会は身近なところにあって欲しい。日本でも都会にはたくさんドッグスクールがあるけれど、地方だと限られてしまう。犬飼い主にとって住みやすいまちづくりには、ドッグスクールは欠かせないのかも!そしてこれは犬飼い主のマナー向上の底上げにもなるのはいうまでもない。


若かりしラッコと日常オビディエンスコースに参加する筆者。

③ 犬連れOKのレストランやカフェがある

他のヨーロッパ諸国と比べスウェーデンではレストランやカフェへの犬連れはあまり一般的ではない。それは犬にしつけができていないから、ではなく多くは動物アレルギーを持っている人がいるかもしれないから、という配慮ゆえ。しかし法律も変わりスウェーデンでも6年前からレストランとカフェのオーナー次第で犬連れ可・不可を決められるようになった。自然の中だけではなく、都会にも犬を連れ出したいのは、飼い主なら願って当然!

④ 夜間・休日も受け入れてくれる救急体制を持った獣医クリニックが存在する

子供と犬はなぜか夜中と休日に病気をする。それもかなり深刻な事態に!我が家でも犬が夜中に胃捻転になるなど緊急の事態が発生したこともあった。当時は運良く救急の獣医に駆けつけることができたが、いつもそれが可能とは限らない。そしてスウェーデンだと地方では、夜間救急動物病院というのはまずない。一番近いところでも車で数時間を要す。緊急動物病院がある町なら飼い主として非常に安心を感じることができる。

⑤ コミューンが経営しているドッグランがある

スウェーデンにはコミューンによっては公営のドッグランがある町がある。たいていのドッグランは日本より規模が大きく大型犬が入れるようになっている。しかし、ドッグランの使用者はどちらかというと、犬の初心者が多い。犬に慣れている人はドッグランを使わずとも他にアクティブにする方法を知っているので、必ずしもドッグランは通好みではない。

【参考文献】

https://www.agria.se/hund/artiklar/om-hund/sveriges-basta-hundkommun/