文:尾形聡子
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家庭に迎えられた犬は、途中で飼育放棄されたり迷子になったりしなければ、基本的にその後の生涯をその家庭で過ごします。昨今、犬を「家族の一員」としてとらえる人が世界中で増加、一人住まいなのか、あるいは家族暮らしなのかなど家族構成に違いはあれど、飼い主となる人とそれぞれの関係性を個別に築いていきます。
そんな犬と飼い主との関係と、人間の子どもと親の関係との類似性を探る研究が多方面から行われ、いくつも報告が出されています。親子関係において、子どもは少なからず親の性格に何らかの影響を受ることは想像に難くありませんが、犬と飼い主の関係においても、飼い主の性格から影響を受け、それが犬の行動としてあらわれてくるだろうと考えられるようになりました。
たとえば2019年に発表された「飼い主のストレス不安は愛犬にも伝播し、長期的に影響している」ことを示した研究を覚えている方もいることでしょう。そもそも犬は人の言動からだけでなく、においからも人の感情を感じることができます。
最近の研究では、同じ家庭犬でも人からのストレスの影響の受け方は犬種グループにより異なることが示され(「人のストレス、影響されやすい犬種とされにくい犬種」を参照)、犬の作業特性の違いが人の感情に対する感受性の違いをつくる一因となっていると考えられます。
飼い主の性格のみならず犬の行動に影響するものとして忘れてはならないのは犬と飼い主の愛着関係の影響です。これまでに、愛着関係の違いが犬の分離不安傾向に影響を及ぼしたり、眠りの質を低下させたりすることが研究により示されています。
さらに、飼い主の性格、さらには愛着関係が犬の社会性や行動に影響を及ぼすこともわかり始めています。それについて詳しくは、藤田りか子さんの以下の記事をご覧ください。
https://inuiwaku.net/46634/ (あなたの犬、しらけていませんか?その理由は… 科学的エビデンスから探る その1
https://inuiwaku.net/46677/ (「犬のニーズに応える」と「犬を構う」の違い 〜 あなたの犬、しらけていませんか?その理由は… その2
さて、このように人の性格が犬にどのような影響を及ぼすかというような研究が進められていますが、フィンランドのユヴァスキュラ大学とヘルシンキ大学の研究チームは、「飼い主の気質」「犬の社会的行動と認知的行動」「犬と飼い主との関係性」の3つの要因を主軸とし、それらの関係性への理解をさらに深めるため新たに研究を行いました。
研究方法の概要
研究者らは