犬が人の表情を読む能力についての最新研究、アレコレ

文:尾形聡子


[photo from Adobe Stock]

犬は人と共生する過程でさまざまな認知機能を進化させてきました。ほかの家畜動物に比べて犬に特別な何かを感じるとするならば、その大きな要因のひとつには、犬が高い社会的認知能力を持っていることが挙げられると思います。

地球上の生物の中で、犬はもっとも人の感情を読むことに長けているかもしれません。そんな犬が私たちの感情をどの程度理解できているのか、というのは常に人の関心事であり、21世紀に入って指差し実験の研究が出されてからというもの、動物行動学、脳科学、遺伝子学などさまざまな学術分野からのアプローチで犬の社会的認知能力についての研究が行われるようになりました。そして少しずつ、犬が理解できていることとできていないことが、明らかにされてきています。

今回はそのような研究の中から、「犬が人の表情を読む能力」についての最新研究を二つ紹介したいと思います。

実は、犬が人を観察するときには顔の表情よりも体の動きに敏感だということが示されています(以下の記事を参考に)。この点は顔に注目する人とは異なります。

https://inuiwaku.net/27594/

https://inuiwaku.net/33751/

とはいえ、顔の表情を無視するわけでは決してありません。体の動きがわからないときなどには重要な判断材料になりますし、犬は実際に人の表情を判別し、それに対して適切に対応する能力を持っています。ですが、このような研究のほとんどは一般の家庭犬を対象とするものです。地球上に生きている犬全体からすると家庭犬として生きる犬は一握りであり、約75%は人に飼育されていない状態で生活しているとの報告があります。

自由に生活する犬の中には完全に人から独立して生きている犬もいますが(いわゆる野犬)、頭数は限られていて、大半は人の生活圏に暮らし、人から提供される食糧に大きく頼って生活を送っています(いわゆる野良犬)。そのような「人から独立した野犬」でもなければ「完全な家畜(家庭犬など)」でもない野良犬は、犬が家畜化の過程で行動や認知機能をどのように変化させていったのかを知るために重要な位置にあると考えられています。


[Image by Rahat_20 from Pixabay]

野良犬と家庭犬の比較実験

はたして野良犬はどの程度、人と社会的相互作用をはかることができるものなのでしょうか。

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