子犬は人の恐怖や幸せを嗅ぎ分けられるのか?

文:尾形聡子


[Image by Valter Cirillo from Pixabay]

人はコミュニケーションの際に視覚や聴覚に多くを頼る性質のため、化学的な信号となる「におい」を積極的に使用していません。しかし、においによるコミュニケーションは動物のみならず植物や細菌など広く生物界全体で行われているものです。とりわけ、においの世界の住人といわれる犬は、においを通じたコミュニケーションに大きく依存して生きています。

人同士の場合、においという揮発性の化学物質(ケモシグナル)を介して感情を伝え合うようなコミュニケーションはとりませんが、我々が気づいていないだけで、特定の感情状態にあるときに特定のにおいを発しています。そして犬はそのにおいを嗅ぎ分けることができるのです。この時点で、犬とコミュニケーションをとるときに視覚・聴覚からの情報だけを使う我々と比べ、犬はさらに嗅覚も使っていると思うと、犬の方が一枚上手のような気がするものです。

さて、犬が人の感情をにおいでキャッチしていることを示した研究はまだ数がすくないものの、2022年に発表された研究を「人のストレス嗅ぎ分け実験〜イギリスの研究より」で紹介しています。また、犬は人の感情のにおいを嗅げるだけでなく、それに影響を受けていることも2018年に示されています(「犬は人の感情を嗅ぎとり、その感情に影響されている」参照)。

犬の持つ、人の感情を嗅ぐ能力ははたして生来的なものなのか、あるいは経験によって身につけられるものなのでしょうか。2018年の研究を主導したイタリアのナポリ大学の研究者は、人の「幸せ」「恐怖」の感情のにおいに対して成犬が取る反応と、子犬のそれとが同じパターンかどうかを調べました。

基本的に子犬は

【こちらは有料記事です】

続きを読むにはして下さい。

ご購読いただくと続きをご覧いただけます。

今すぐ会員登録して続きを読む