文:藤田りか子
[Photo by xan latta]
犬が少しでも「ク〜ン」と鳴けばガンドッグの競技会では失格となる。あくびをしたときに犬がたまにだす「アオン」という声ですら、許されない。となれば、「吠える」だなんてもっての外。アジリティやフライボールのギャラリー(=試合リングの外)で、他の犬のパフォーマンスを見て興奮のあまりに吠えまくっている犬がよくいる。これはガンドッグの世界ではたとえギャラリー待機であっても NO-NO 行為。要は他の犬が何をしていようが犬は静かに待機することが求められる。
ただしフライボールのハンドラーによると、吠えさせておいてテンションを高めようとしている人もいるとのことだ。が、そこがガンドッグとフライボール競技の違いでもあるだろう。フライボールの試合はスピードが求められるタイム競争である一方、ガンドッグは、回収を行うだけではなく、ハンドラーと静かに待つ、歩くというパフォーマンスも競技の採点項目に含まれる。また競技は瞬時に終わるものではなく、時には何時間も続く。テンションさえ高ければできるというスポーツではない。
犬をクールに落ち着いた状態に保っておくこと、はガンドッグのハンドラーが持つべきエチケットである。さてこれって、家庭犬のハンドラー(=すなわち飼い主さん)が持っていても決して悪いものではない。というのも「家庭犬」としてのパフォーマンスは瞬時に終わるものではなく、犬の一生を通して続くものだからだ。