母犬の出産のしやすさに関係してくる要因は?

文:尾形聡子


[photo by Stephen Kruso]

繁殖するにあたり、母犬はもちろん生まれてくる子犬の福祉を考える上で周産期や出産の環境を整えることはとても重要です。出産回数を制限したり、出産年齢の下限と上限を設けるなどして、母犬の健康を守ろうとする取り組みが各国で行われていますが、母犬の出産を含む周産期の環境を大切にすることは、健康な子犬の誕生にも繋がっていきます。

ところで、犬はたくさんの子を苦労せずに産むということで古くから安産の神様とされてきました。しかし現状を見ると、短頭種においてはその限りではありません。骨盤が狭く胎児の頭が大きいなど複数の原因により、自然分娩では母犬も子犬も命の危険にさらされる可能性が非常に高く、選択的帝王切開の助けなくしてはほとんど出産が成立しない犬種もいます。これまでの研究から、犬全体での難産は5%のところ、イングリッシュ・ブルドッグは90%にも達し、ボストン・テリアやフレンチ・ブルドッグなどでも80%以上が帝王切開により出産をしているという報告がされています。

このように、出産に問題を抱える犬種に関する調査はそれなりに行われていますが、ほかの哺乳類において報告されているような、出産のしやすさが出産直後の母性行動や生まれてきた子の生存率に影響を与えるかどうかについての研究は、これまで犬ではほとんど行われていませんでした。今回は、短頭種のような出産に獣医療が必要とされる犬種以外の母犬において、出産のしやすさ、あるいはしにくさに影響を与える要因を調査したイギリスのクイーンズ大学ベルファストの研究を紹介したいと思います。

これまでにわかっていることとして、難産のリスクは特定の犬種で高いこと以外に、年齢が

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