イスラエルのドッグショーは小学校の体育館で

文と写真:藤田りか子

イスラエルのアラドで行われたCACIBショー(2010年)。会場ではところ狭しとパピークラスの審査が行われた。小学校の体育館を借りてのインターナショナルショーなんて素朴!

「イスラエルの犬事情」に続き、今回のブログは「なんとイスラエルにもドッグショーがあった」という感動についてである。 イスラエルのケネルクラブは、FCI に属しているので、ドッグショーも FCI のルールに則って行われる。訪問したのは、なんと CACIB(インターナショナルショーチャンピオンになるためのサーティフィケート)が取れるインターナショナルショー。ジャッジもラトビア、デンマーク、ギリシアからと国際色豊かに勢ぞろい。

エントリー数は500頭。犬種数は約100種。会場は小学校の体育館とスーパーマーケットのモール広場!ちょっと不便だけれども、なにしろこのショー開催地であるアラドという砂漠のど真ん中の町は日本の村ほどの大きさ。適切な会場がない。

しかし、CACIBショーなのに、この素朴さがいい。それに毎回大都市のテルアビブではなく、時には開催地にアラドを選んでしまおう!というケネルクラブの余裕とユーモアがうれしい。会場からちょっと出ると広大な砂漠を突き切る舗装道路が。そのすぐ向こうには死海がある。

アラドから、塩湖、死海へ続く道。死海は海抜マイナス400m!ほとんど地底湖…?死海から取れるミネラルはスキンケアにも使われている。

ケネルクラブが創立されたのは70年代というから、それほどショー文化に歴史があるわけではない。また、こんな風にインターナショナルショーが盛んに行われるようになったのですら、つい2年前(2008年)だという。国が不安定で、それまでケネルクラブ自身も満足に運営されていなかったとのこと。これじゃいかんと目覚めて、クラブの運営に携わる人々をすべて入れ替え、新しいスタッフで再出発。

駆け出しのドッグショーであるが、いやいや、これがなかなかの犬の質レベルなので驚いた!これは犬先進国であるヨーロッパに近いという利点でもあるだろう。多くの犬舎は、東欧、ドイツ、イギリスや北欧から犬をさかんに入れている。それを改良して自分のラインを作るのだ。それを示すがごとく、ほとんどの出陳犬たちは輸入世代の初代だった。つまり外産。血統書名を見ると明らかだ。外国の有名な犬舎名が入った犬たちがたくさんいた。BIS(ベストインショー)に輝いたグレート・デーンは、FCI グレート・デーン世界では有名な、スウェーデンの Diplomatics からの犬。

「いい犬を外国から取り入れたら勝つにきまってる」

なんて思うなかれ。ここはイスラエル。ショーに勝ったからといって、その犬や子犬が法外な値段で取引されることもない。なにしろこの国では「イスラエルの犬事情」で述べたように、犬の社会的地位はひどく低い。血統犬種を飼う文化もそれほど広まってはいない。「誰が、そんな大金を支払ってまで犬を飼う?」という風潮なのだ。

BIS(ベストインショー)にはスウェーデンの Diplomatics のフォーンのグレート・デーンが。イスラエルは今一生懸命に外国から犬を取り入れ、イスラエルの血統犬種の土台を作っているところである。

というわけで、イスラエルでは純粋なる情熱があってこその外国からの犬調達であり、投資や儲けのためではない。それを元に犬作りをする、というブリーダーの意欲はホンモノだ。この調子だと、イスラエルの犬の質はどんどん向上するだろう。現に「ブリーダーズ・クラス」にもショーでは数犬舎がエントリーしていた。これは犬舎における犬のタイプの均質性を審査するもので、3頭から5頭でなるグループを同時に見せる。真面目な犬作りをしている証拠でもある。

(本記事はdog actuallyにて2010年6月16日に初出したものを一部修正して公開しています)

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