文:尾形聡子
[photo by caroline legg] コッカプー。
かれこれ30年ほど前のことでしょうか。今でいうところの「デザイナードッグ」の存在を、アメリカに行ったとき初めて知りました。その頃はデザイナードッグなどとは呼ばれていませんでしたが、その犬はコッカプー(アメリカン・コッカー・スパニエル✖︎プードル)で、すでに当時のアメリカではごく普通の家庭犬として広く知られているようでした。その後ほどなくして、コッカプーやラブラドゥードルが、毛が抜けない、アレルギーフレンドリーであることを目的として作り出された補助犬だということを知りました。
時は流れて2000年代に入り、名前を聞いてもポカーンとなってしまうようなデザイナードッグ(ハイブリッドドッグ)が続々と増えていることを知りました。コッカプーやラブラドゥードル、ゴールデンドゥードルはもちろん、パグル(パグ✖︎ビーグル)、チワピン(チワワ✖︎ミニチュア・ピンシャー)などなど、一度聞いただけでは覚えられないような名前のデザイナードッグが誕生していました。
オバマ元大統領のファーストドッグの候補犬としてラブラドゥードルの名前が挙げられたころもアメリカではさまざまなデザイナードッグが流行、その一方ではデザイナードッグ人気を懸念する声も上がっていました。以下の記事は当時の状況を危惧した記事になります。
https://www.newsweekjapan.jp/stories/us/2009/05/post-137_1.php
この記事の中に、
デザイナードッグが人気なのは、「交配種の犬は2つの犬種のいいところを受け継ぐ」と消費者が信じ込まされているためだ。
「欠点のない犬を欲しがるような人に受けている。しつけが行き届き、抜け毛もなく、まったく健康という完璧な犬を求める風潮に取り入っている」と、ラブラドルレトリバー・クラブの理事で獣医のフランシス・スミスは言う。「もちろん、そんな動物がいるはずはないのだが」
一部の交配種は何十年も前から存在するが、今は悪徳ブリーダーが手当たり次第に新種をつくり出している。「彼らは『お望みならどんな犬でもつくれます』と言うが、ペンキを混ぜ合わせるようなわけにはいかない」と、メインライン・アニマル・レスキューのスミスは言う。
と書かれています。ここにあるのは、先日の北條美紀さんの「犬の問題行動、なくなれば幸せになれるの?」の記事にあるテーマと真逆をいく人の発想のあらわれを危惧しているとも感じます。何かと便利な現代を生きる人々は、犬にまで安易に便利さを求めるようなところがあるのかもしれません。けれど、人がつくった生き物である犬の福祉を大切にする意識は、絶対に持っておくべきことだと思っています。
日本でももれなくデザイナードッグの需要の高まりを、道すがらすれ違う犬たちを見て感じている昨今ですが、このような状況は日本だけでなく世界各国でも続いています。ことイギリスではコロナ禍においてデザイナードッグの飼育頭数が大幅に増加、今やデザイナードッグが「流行犬種」とも言える状況になっているそうです。
そのような状況を鑑み、イギリスの王立獣医科大学、ノッティンガム大学の研究者らによる研究チームは、デザイナードッグの需要増加の背景にある要因を明らかにするために、純血種を両親犬とするデザイナードッグを購入する人の動機、購入前の行動、及び購入行動を純血種の購入者と比較、分析を行いました。
[photo by Jackie] キャバプー。