分離不安の犬のために2頭目を迎える…は本当に有効なのか?

文:尾形聡子


[photo by Gallant’s Photography]

現代社会で犬と暮らすにあたり、飼い主の多くは日常的に犬を自宅において仕事へ出かけます。そんな時に問題になるのが犬の分離不安の症状です。飼い主が家から出て行ったあと、分離不安の犬は、吠え続けたり、家具を噛んで壊したり、トイレの粗相をしたりするなどの行動を取ることがあります。

飼い主と離れ離れになったあとに観察される分離不安は問題行動のひとつとして知られるものです。過去の研究では半数近くの犬が現在もしくは過去に分離不安関連の行動を示しているとの報告もあるように、分離不安は一般的に見られる問題行動であり、問題行動の中の攻撃性と並んで数々の研究が行われてきています。しかし、その原因や予防方法については混沌とした状態のままである一方で、インターネット上には分離不安の犬への対策に関してさまざまな情報が溢れています。

そのような情報のすべてが分離不安問題を解決するにあたり必ずしもどの犬にも当てはまるとは限りません。たとえば、分離不安の犬は飼い主に愛着を持ちすぎているため、最善策としては犬のコンタクト要求を無視したほうがいい、というようなことが一般的に言われることが多いと思いますが、それよりも、犬にとっては安全や予測性がより重要であると考える研究者もいます(詳しくは「犬の分離不安~犬と飼い主の愛着関係からさぐる」をご参照ください)。

また、分離不安になるのは犬がひとりで留守番をするのが寂しいためだ、だから、もう一頭犬を迎えた方がいい、というようなアドバイスを聞いたことがある方も多いのではないかと思います。同種の仲間がいればひとりきりの寂しさは解消され、寂しさからから生ずる不安な気持ちが抑えられるのではないか、という考えです。恐怖心の強い犬は1頭で生活している場合に多くみられ、他の犬の存在がストレスに適応しやすくなるように働く可能性があるというような研究結果はあるものの、留守番する際に同居犬の存在のありなしが影響するのかを直接調査した研究はこれまでありませんでした。

そこで、スイスの

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