文:尾形聡子
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犬ほど飼い主の生活スタイルに影響を受ける家畜はいないかもしれません。そのため、それぞれの犬が積んでいく経験は飼い主により大きく違ってくる可能性があります。可変的な経験のひとつが飼い主によって行われるトレーニングです。家の中で一緒に暮らすことが主流になっている今、飼い主が犬に望ましい行動やしてほしくない行動を教える機会も格段に増えました。
生活スタイルが変化する中で、トレーニング方法も変化してきています。昔ながらの叩いたり押さえつけたりする嫌悪刺激を与えて犬の行動を制御する方法から、犬に嫌悪刺激を与えず、褒め言葉やおやつなどのご褒美を使って教育していくようなトレーニング方法が主流となっています。とはいえ、先日のインタビュー記事「斉藤喜美子の「日本の保護犬事情に物申す!」その3:保護犬のトレーニング事情」の中で斉藤さんがお話ししていたように、昔ながらの調教・訓練的な方法でトレーニングをしている人もまったくいないわけではありません。
そもそも近年のトレーニングのアプローチ方法は、スキナー(Burrhus Frederic Skinner)という心理学者で行動分析学の創始者が提唱した強化理論の中の用語を使い説明されることが多くなりました。「正の強化」「負の罰」「正の罰」「負の強化」といったものです(強化理論についての詳細は「ポジティブという言葉の響きに流されないで」の中で臨床心理士の北條美紀さんが説明をしてくれているのでそちらをご覧ください)。
犬のトレーニングにおいて強化理論は大きく「報酬ベース(正の強化と負の罰)」と「嫌悪ベース(正の罰と負の強化)」とにわけられます。これまでの数々の研究から嫌悪ベースのトレーニング方法の使用は短期的な効果はあるものの、結果的に攻撃的な行動が増加したり、ストレスレベルが上昇したりと犬の心身によくない影響を及ぼすことが示されています。つまり、嫌悪ベースのトレーニングを続けることは犬の福祉を損なう可能性があるということです。
[photo by benjamin.choi]
そこで近年、犬のメンタルの状態を測定するために