文:北條美紀
[Photo by Oiluj Samall Zeid]
今年の夏も本当に暑かった。夏ってこんなに暑かったっけ?と思うたびに、私たちのストレス耐性(ストレスに耐える力)が劇的に下がりつつあることを痛感する。今は、どこでも冷房がきいていて、何なら人のいる場所を感知して冷やしてくれて省エネだし、空気洗浄までしてくれる。スーパーの生鮮食品売り場は寒すぎるくらいだ。でも、数十年前は、うちわを扇ぎながら扇風機に向かって「あーーーー」と声を出し、音の振動を楽しんでいた。窓は開けているので、蝉の狂ったような鳴き声と風鈴の音が聞こえ、虫よけの蚊取り線香の匂いがした。
と、昔の日本の夏を懐かしむのはこのぐらいにしておこう。私たちの生活は、可能な限りストレスを軽減し、便利で労力のかからないようにと進化を遂げてきた。蛇口をひねれば温水が出るし、トイレはお尻まで洗ってくれる。何かを知りたいと思えば図書館に行かなくてもインターネットで検索できるし、重い辞書も必要ない。そんな便利な生活に慣れ切った私は、歩いて3分のコンビニに自転車で行くようになっている。危ない、実に危ないと思うのだ。
ストレス減少の弊害~ストレス耐性の低下が招いたもの
これだけ便利な社会になれば、生活上のストレスは少なくなる。その一方で、ストレスに晒される機会は減り、私たちのストレス耐性は急激に下がり続けている。ストレス耐性が下がれば、