文:尾形聡子
[photo from wikimedia] ティッキングを持つイングリッシュ・スプリンガー・スパニエル。
前回、犬のコートパターンのひとつ、ティッキングとローンについての説明をしました。ティッキング、ローンはどんな柄で、その柄がつくられるには何が必要で、これまでどのようなことがわかっていたのかを理解いただいたところで、今回は、ついに突き止められたティッキングとローンの遺伝背景に関する最新の研究を2つ紹介したいと思います。
ひとつは、オーストラリアのシドニー大学を中心にアメリカ、スウェーデン、ノルウェーの大学の研究チームによるもの、もうひとつは、アメリカにて犬のDNA検査サービスを提供しているEmbark Veterinaryという企業と、その企業の設立者のひとりが教授を務めるコーネル大学との共同研究です。まずはシドニー大学主導の研究から見ていきましょう。
Eコッカー・スパニエルと、Eスプリンガー・スパニエルを対象にした研究
研究者らは、ティッキングとローンのいずれの毛色も一般的にでてくるイングリッシュ・コッカー・スパニエル(ECS)とイングリッシュ・スプリンガー・スパニエル(ESS)を解析対象犬種としました。前回も触れましたが、ティッキングやローンは鳥猟犬種に広くみられる柄で、もれなくこれら2犬種もFCI第8グループの鳥猟犬種(ガンドッグ)に属しています。
まず研究者らは、ECSのローン個体34頭とパーティカラー個体(ローンではない)9頭を対象にゲノムワイド関連解析を行い、