Clubhouseと愛犬家コミュニティの将来は?

文:藤田りか子

話題の音声SNS「Clubhouse(クラブハウス)」。愛犬家コミュニティにもじわじわと広がりはじめている。Clubhouseについて「知らなーい」という方は、ネットを検索すればたくさんの紹介サイトがあるので、そちらを参考にしていただきたい。

ちなみに日本はClubhouse誕生国アメリカを除くと、世界で2番目にアプリのダウンロード数が多い国だそうである(1位はドイツ)。つまりそれだけ「集いたい!みなとおしゃべりして共感したい!」という気持ちが強いのかもしれない。ちなみに筆者の住むスウェーデンでは今のところ認知度はゼロに近い。アカウントを持っている人の大半はテレビや新聞関係のジャーナリストに占められており、まだプロメディアの間だけのSNSにとどまっている。

ClubhouseにはROOMというものがある。アカウントを持っていれば各自立ち上げることができ、そこで好きなトピックスをお題にして雑談ができる。もちろん自らROOMを作らずに、誰かのROOMに入って拝聴することもできる。聴きながら「ちょっと意見を言いたい!」「私も雑談にくわわりたい」と思えば、トークに入れたりする。

Clubhouseを使いはじめてまだ10日ぐらいしか経っていないが、その威力というか効果をなんとなくわかりはじめたという感じだ。Twitter やFacebookに比べて、敵対意見が飛び交いにくいという印象を持った。たとえだれかが自分と反対の意見を述べていたとしても、リアクションは文字ではなく、リアルタイムで話をすること。文字なら身を隠せるので中傷誹謗しやすいが、トークだから自分の生の声で相手と意見を交わさなければならない。よって個々が「社会的マナー」をより守り「いい人」になりがちなのかもしれない。

飼い主心理学教室」でお馴染みの北條美紀先生の話ではないが、相手を否定せずむしろ同調しながら同盟を組むという可能性もトークなら起こりやすい。組んだところで相手の心を開かせ、徐々に自分の意見を展開してゆく、というような現象をClubhouseでなんどか目撃(耳撃?)した。ついには「いっしょに繋がってこれからも意見をともに展開してゆきましょう!」などとハッピーエンドに終わるROOMもあった。

こんな風に犬のトレーニングについて皆でディスカッションをしたり意見を交換できたら、なんて面白いだろうと思ったものだ。たとえばFacebookで「褒めながら」のトレーニングをする人のスレッドに少しでも「罰」が入るトレーニングの話などをしたら、すかさず叩かれてしまうものだ。その逆もしかりである。スウェーデンやアメリカのとあるドッグトレーニングのFacebookのスレッドなど、「罰」vs「褒める」の戦いで終始していることもある。討論ならいいのだが、相手をこてんぱんにしようとする傾向もなきにしもあらずだ。だから意見が片方に偏りがちで、派閥もできやすくなる。結局個人の視野が狭まってしまう。

ノーズワークスポーツクラブでもRoomを立ち上げてみた。トピックスはノーズワークの際のご褒美。参加した人の中にはアプリの使い方に不慣れでどうやって手をあげて意見をだしたらいいかわからない人も!

しかし話の場を設けることで、その人が使った言葉、たとえば「罰」あるいは「ご褒美」がトレーニングの中でどんな意図を以って用いられているのか、一方的な決めつけなしにそのニュアンスを雑談を通して知ることもできる。実際に相手の声を通して聞いてみれば「なるほど、思ったほどひどいものじゃなかったんだ!」なんてこともよくある。

今のところ犬に関する雑談の部屋は他の分野に比べると圧倒的に少ない。あったとしてもトピックスのバリエーションには限りがある。獣医さんやペットビジネス系の方がモデレーターをしていたりすることが多く、犬の健康や食事あるいは愛護や保護犬についての話題が主だ。というか、今書いている時点では、少なくともそんな印象がある。ただし右肩上がりの発展を遂げているSNSなので明日にはその傾向は変わっているかもしれない。

今日初めて特定の犬種についてファンが集う部屋を見つけた。筆者個人の好みとして、こんな風なニッチでオタクな犬ROOMがどんどん出てこないかな、あるいは作れないかな、と思っている。そのうちオビディエンスやアジリティ、ノーズワークのトレーニングに始まり、はたまたガンドッグのトレーニングを語るROOMなんかも立ち上がったら楽しいだろう。フィールド系のレトリーバーの話なら夜通しでみなと雑談してしまいそうだ。ちなみにアメリカにはすでに犬のブリーディングなどディープなディスカッションをするROOMがある。

トピックスが多様性を増してくるのは、時間の問題だろう。招待制であり個人が持てる招待枠も限られている。誰もが思った時にアカウントを取得できるわけではない。だが、今後メンバーが増えれば犬にまつわるさまざまなトピックスを扱うROOMが出てくるのではないだろうか。

犬曰くでもそのうちROOMを立ち上げてみますので、ぜひみなさんと犬にまつわるいろいろなことについておしゃべりができるといいですね!