文:北條美紀
[Photo by Melanie]
人の相談にのって、辛い話ばかり聞いていて苦しくなりませんか?という質問をよく受ける。もちろん、答えはNoだ。どんな話であっても、その人の大切な言葉を聞けるのだからこんな栄誉はないと思っている。でも、足しげく通ってくるクライアントがなかなか楽にならず、変化が見られないときには悩む。何度もこれまでのやり取りを反芻し、どうすればいいのかと考える。何とかしなければと焦り、自分の無能さを恨み、クライアントに会うのが辛いと思うこともある。皆さんも、誰かの相談にのり、へとへとになった経験があるのではないだろうか。
そんなときの私はクライアントに巻き込まれていることが多い。クライアントに共感しているつもりが、知らず知らずのうちにクライアントの「ゲーム」に巻き込まれている。ゲームとは、エリック・バーン(Eric Berne)が創始した交流分析の中の「ゲーム分析」で用いられる言葉である。(犬曰く主催のセミナーにご参加いただいた方には、交流分析の中の「自我分析」を、エゴグラムを使って体験していただきました)。
私が、カウンセラーとしてゲームに巻き込まれやすいのは、子どもの問題に悩む両親が相談者のケースである。ドッグトレーナーの場合なら、ペットの問題行動に手を焼いたご夫婦から相談を受けるようなケースだろうか。ついでに言えば、私が仕事と関係のないところで巻き込まれるのは、夫婦やカップル間の価値観の違いを愚痴られるときだ。
どんなふうに巻き込まれるのかを、カウンセリングを例に紹介してみよう。