文と写真:尾形聡子
タロウの急激に巨大化してしまったほくろからの出血に気がつき獣医に駆けつけたら、その日の夜に急遽手術となった。彼を病院へ預け、帰り道はハナとふたりきり。ハナがいつになく興奮していて、家に着くまでほぼ小走り状態だった。手術の判断を迫られた私から普段と違うにおいが漂っていたのかもしれないし、獣医師からもなにか発せられていたのかもしれない。もちろん診察台の上に乗せられたタロウからも。明らかにいつもとは違う雰囲気(におい?)に、診察を見ているだけだったハナは興奮という形で散歩中にストレスを発散するしかなかったのかもしれない。
家に戻ってご飯を与えるときだった。ハナはまったく見向きもしない。普段はあれだけ何でも食べたがるというのに。明らかにハナは普段の診療中に受けるストレスとは違う、得体の知れないストレスを受けていたのだ。夜のうちに手術が無事に終わったとの連絡が来てホッとするも、やはりハナは何も食べようとしない。一夜明け、散歩は普通に出かけたものの、ご飯には口をつけないままだった。
手術を終えたタロウを迎えに行って戻ってきたのはお昼近く。術後間もないというのに、タロウ本人は腹ペコ状態ですぐさまご飯をバクバクと平らげた。それを見たハナはつられてなのか、安心したのか、ようやくご飯を口にした。
これはいかにも『同居犬の安否を心配して、ご飯がのどを通らない』という美談に仕立て上げられそうなエピソードだ。が、そのときに、「同居犬の死に触れ、残された犬は何を感じるのか」を調査した研究をふと思い出した。New Zealand Companion Animal Councilの研究者が主導した研究で、仲間を喪った犬と猫の行動にどのような変化がみられたかについてアンケート調査を行ったものだ。
調査の結果として