望まれるヘアレスも望まれないヘアレスも遺伝子が決めている

文:尾形聡子


[photo from University of Helsinki news] ヘアレスと被毛ありのディアハウンドたち。

さまざまな見た目の特徴を持つ犬種が存在する中、ヘアレスであることが犬種の特徴とされているのは世界にたった4犬種しかいません。古くから存在しているチャイニーズ・クレステッド・ドッグ、メキシカン・ヘアレス・ドッグ、ペルービアン・ヘアレス・ドッグ、そして2016年にアメリカン・ケネル・クラブで公認された新しい犬種のアメリカン・ヘアレス・テリアです。

これらの犬種に毛が生えてこない個体がいるのは、それぞれの犬種においてある特定の遺伝子に変異が起きているためです。しかし、古くからの3犬種とアメリカン・ヘアレス・テリアとではその原因となる遺伝子が異なることが分かっています。そして、ヘアレスであることが望ましくないディアハウンド(スコティッシュ・ディアハウンド)において、たまに生まれてくるヘアレス個体も遺伝子の変異が原因となっていることが明らかにされました。

ディアハウンドのヘアレスは劣性形質

ディアハウンドがヘアレスとなる原因を突き止めたのはフィンランドのヘルシンキ大学の研究者らです。「Human Genetics」に発表された論文によれば、原因となる遺伝子はSGK3(glucocorticoid regulated kinase family member 3 gene)で、SGK3の2番目のエクソン(タンパク質に翻訳される領域)に1塩基挿入によるフレームシフトと呼ばれる変異が起きているのを発見しました。フレームシフト変異が起きているためにアミノ酸の読み枠がずれ、本来つくられるタンパク質とは異なる、正常な働きができないタンパク質をつくり出していることが分かったのです。

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