文:尾形聡子
[photo by Lottie]
みなさんは愛犬と一緒に寝ていますか?
藤田りか子さんによる昨年のこちらの記事は、とても大きな反響のあったもののひとつ。寝ることは誰もが毎日行っているからこそ、自分も含め、ほかの犬飼いの人たちはどうしているのだろう?と興味をひいたのではないかと思います。平成の時代が始まったばかりの頃にくらべれば、家の中で犬と暮らす人がぐんと増え、それに伴い愛犬とベッドを共にするようになった人ももれなく増えていることでしょう。
愛犬と一緒に寝る人、寝ない人、時と場合によるなど人それぞれ、理由もさまざまかと思いますが、どうせ眠るならばできる限り質のよい睡眠を得たいと考えるのではないでしょうか。なぜなら睡眠は人にも犬にも生物が健康に生きていく上で欠かせない、とても大切な時間だからです。
睡眠の質という点に着目したアメリカのカニシャス大学の行動学者らは、まだあまり広く調査されていない、ペットが人の睡眠の質に与える影響についてオンライン調査を行い、その解析結果を『Anthrozoös 』に発表しました。
女性がもっとも快眠を得られる睡眠パートナーは?
研究ではアメリカに住んでいる18歳~69歳の女性962人(参加者の58%がニューヨーク州に在住)にたいしてオンライン調査が行われました。
参加者の中で、1頭以上の犬と暮らしている人が415人(43.1%)、1頭以上の猫と暮らしている人が122人(12.7%)、犬と猫それぞれ1頭以上ずつと暮らしている人が360人(37.4%)、犬や猫と暮らしていない人が65人(6.8%)でした。
寝るときの状況として、55%が少なくとも1頭の犬と、31%が少なくとも1頭の猫と、そして57%が人のパートナーと一緒にベッドを共にしていました。詳しい内訳は以下のようになっています。
- 人のパートナーとだけ一緒に 171(17.8%)
- 人のパートナーと1頭以上の犬 216(22.5%)
- 人のパートナーと1頭以上の猫 99(10.3%)
- 人のパートナーと犬と猫それぞれ1頭以上ずつ 64(6.7%)
- 誰とも一緒に寝ない(自分一人で寝る) 91(9.5%)
- 1頭以上の犬とだけ 186(19.3%)
- 1頭以上の猫とだけ 74(7.7%)
- 犬と猫それぞれ1頭以上ずつ 55(5.7%)
過去1ヶ月の期間における睡眠の質を評価するために、ピッツバーグ睡眠調査票(Pittsburgh Sleep Quality Index: PSQI)と呼ばれる自己申告アンケートが使用され(日本語版はこちら)、回答が解析されました。
その解析によると、人のパートナーと一緒に寝る女性と比べ、犬と一緒に寝る人は睡眠の邪魔をされると感じることが少なく、心地よさと安心感をより強く感じていることが示されました。逆に、猫と一緒に寝る人は人のパートナーと寝る場合と同じくらい睡眠を邪魔されているといっており、人や犬と一緒に寝ている人よりも心地よさや安心感をあまり感じていないことも示されました。ただし、犬や猫と一緒に寝ていても、睡眠の質のよしあしについての反応はさまざまだったそうです。
犬の飼い主は、猫だけを飼っている人よりも早寝早起きでした。また、ほとんどの犬の飼い主は寝ている間の少なくとも75%を犬がベッドの上で過ごしていると考えていましたが、猫については過ごしているだろう時間はまちまちで、犬よりも猫の方がベッドの上にいる時間が短いと飼い主が思っていることも示されました。
今回の結果はあくまでも、オンライン調査に参加した女性の主観によるものです。そこでは女性にとって犬がよき睡眠パートナーになる可能性が示唆されましたが、本当に女性の眠りの質をよいものにしているのかどうかをよりきちんと示すには、科学的な追跡調査を行うことが必要だと研究者らはいいます。また、個体によっては犬でもひどく睡眠妨害をされることもあることや、猫によっては素晴らしい睡眠パートナーになる可能性もあり得るとしています。
ちなみにこの研究が女性だけを対象としたのは、単に男性の参加者が大勢集まらなかったためだそうです。そもそもこのような研究にボランティア参加する男性はおしなべて少なく、また、睡眠の質への興味が女性の方が強いという背景もあるのではないかと研究者らは考えているそうです。
[photo by Claudia Zimmer]
2016年と少し前の調査になりますが、イギリスの新聞テレグラフのサイトでも簡単なアンケート調査を行っています。猫や犬と暮らす男女500人ずつに対して、「一緒に寝るのは犬や猫または人のパートナーのいずれがいいか?」とたずねたところ、ペットと一緒に寝るのを好んでいたのは女性の54%、男性は38%という結果となっていました。
実際に、犬と一緒に寝たときの睡眠の質がどのようになっているかという科学的な解析も待たれるところですが、何よりもまず、「一緒に寝たい」と思うパートナーと一緒に寝られること(もしくは一人きりで寝たいか)がストレスを減少させ睡眠の質を高めることにもつながるのではないかと思うのです。イギリスのアンケート調査にあるように、女性のほうがよりペットと一緒に寝たがる人が多かったという点や、女性の睡眠の質をよくするのに犬がプラスな影響を及ぼしている可能性を示唆する今回の調査結果も、背景にはそのようなこともあるのではないかと想像します。
私のベッドの脇で寝るタロウとハナ。
かくいう私はずっと犬たちと一緒に寝る派でしたが、ここ数年、犬たちがベッドに上がってこなくなってしまいました。というのも最大の原因は足腰が弱まりベッドに飛び乗ることが厳しくなってきてしまったためです。そんな犬たちのためにベッド脇にステップをつけてみたのですが、それでもいまひとつ。犬たちは日中も好きなときにベッドに上がって寝ていましたが、そんな様子もほとんど見られなくなっています。とくに、冬場のフカフカ布団の上で体位を変えたり動いたりするのが辛いようなのです。
さらには、犬のおねしょの心配もあったりと、最近は心行くまで一緒に眠ることがなくなってしまいました。寂しくもありますが、それでもすぐ近くで犬たちが健やかな寝息を立てているのを聴いているだけでも、とても幸せな気持ちで眠りにつけるものです。
【参考文献】
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