文:尾形聡子
2017年の1年間にJKCに登録された犬の頭数が発表され、昨年もまたプードル、チワワ、ダックスフンドの3犬種が上位3犬種となったことをご存知の方も多いと思います。トップテンには小型犬の顔ぶれがずらり。90年代にはラブラドールやゴールデンなども上位にランキングされてはいたものの、このところずっと小型犬人気が続いています。これほど小型犬が人気なのは、はたして日本だけなのでしょうか?
オーストラリアのシドニー大学の研究者らは、1986年から2013年の間にオーストラリア・ケネルクラブ(ANKC:Australia National Kennel Council)に登録された180犬種の登録数の解析を行い、その結果を『Canine Genetics and Epidemiology』に発表しました。
オーストラリアでも小型犬人気が上昇
研究では過去28年にANKCに登録された180犬種について、小型(10キロまで:54犬種)、中型(10~25キロ:62犬種)、大型(25~40キロ:42犬種)、超大型(40キロ以上:22犬種)に分類し、頭の形にも着目して頭数の推移を解析しました。
その結果、小型~中型の犬は大型~超大型の犬と比べて、登録数を増やしてきていることが示されました。また、パグやブルドッグのような短頭種の頭数も年々増加してきていることもわかりました。
この結果について研究者らは社会的な変化の影響として、まず、人口密度が増加して家が狭くなったことが考えられるとしています。そして、多くの人々は小さな家でも小型犬なら大丈夫だと想定するようです。ただし、小型だからといって運動量も少なくて済むと想定することは必ずしも正しいわけではないといっています。さらに犬が狩りや家畜を守るといった本来してきた仕事からはなれていき、現在はコンパニオンとしての犬と暮らしたいという、犬と暮らす目的そのものが変化してきました。そのため身体の大きさや作業特性などに関係なく、さまざまな犬種が選ばれるようになってきたことも背景にあるのではないかと考察しています。
またこれまでの研究から、人々がマズルが短く頭の丸い犬を好む理由について、丸顔で大きな目、小さな鼻などの”カワイイ”顔の特徴が、愛しいという感情をかき立てることが示されています。
しかし短頭種はその解剖学的な形態から、気道閉鎖症候群(BOAS)と呼ばれる呼吸器系の病気になりやすかったり、シワの多さから皮膚病にかかりやすい、目をぶつけやすいといった健康問題があることが知られています。このような短頭犬種が抱えがちな健康問題を知らずに飼育する人が多い現状も問題だと感じます。
犬はその大きさに関係なく運動が必要で、もちろん病気にもかかります。見た目だけで選ぶことのないよう、犬種特有の病気があることもやはり知っておくべきことのひとつだと思うのです。
(本記事はdog actuallyにて2016年4月27日に初出したものを一部修正して公開しています)
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