犬も持つ、問題が解決できた!ときのポジティブ感情

文:尾形聡子(本記事はdog actuallyにて2013年10月24日に初出したものを一部修正して公開しています)

[photo by Stefano Mortellaro]

“エウレカ!(ユリイカ、ユーレカなど)” 古代ギリシャの学者、アルキメデスが物理学の法則、アルキメデスの原理を発見したときに叫んだとされるこの言葉は、”見つけた!わかった!”といったことを意味するギシリャ語です。発見したりひらめいたりするときに人が抱くこの感覚は、なにもアルキメデスレベルの難題である必要などありません。身近なところにある些細な疑問が明らかになったり、パズルを解いたりゲームをクリアしたりするときに感じる充足感も然りです。このような、問題を解決したときに抱く感覚は、はたして犬も持つのでしょうか?スウェーデンのウプサラ大学の研究者らが実験を行い、結果を『Animal Cognition』に発表しました。

実験にはメスのビーグル12頭が参加しました。犬が何らかの問題を解決したときに”エウレカ!”と思うかどうか調べるために、犬たちは事前に、レバーを押したりテーブルに載ったボールを押しのけたりなど6つの異なる問題解決タスクが用意され、そのうちの3つができるようになるまで訓練されました。タスクを覚えたあと1週間の期間をおいて、新しい環境(門がひらいたらそこを通って大きな広間に続くような部屋)の中でテストは行われました。テストの報酬には、食べ物、犬のことを褒めてなでる人との接触、他の犬と接触したり一緒に遊ぶ機会、の3つが用意されました。

実験では、2頭の犬が組になっての対照実験が行われました。片方の犬は、訓練時と同じようにタスクに成功したらすぐに音と何らかの報酬を与えられ、もう一方の犬は同様にタスクを行うも、成功してもすぐに報酬は与えられず、タスクと報酬が独立した別々のイベントとなるように時間をおいてから報酬を与えられました。犬のモチベーションを測るための活発度は、尻尾を振るスピードや脚の動きの速さ、タスクへの取りかかりの速さなどの行動のビデオ解析と心拍数とで評価されました。

その結果、犬は、装置を正しく操作したのちに報酬を得られたときのほうが、なにも作業をしないでも同じ報酬が得られたときよりも、より高い活動レベルを示しました。これは、知的作業の成功報酬は、犬のポジティブ感情を強く引き出すこととつながることをあらわしています。報酬の種類でも活動レベルは異なりました。もっとも高かったのはやはり食べ物で、次に人に褒められることでした。犬との接触は3つの中では一番活動レベルが低い結果になったのですが、それでも効果的な報酬となり得ることが示されました。

また訓練時と同じようにタスクを成功したらすぐに報酬を得られた犬は、尻尾の振りも動きも活動的になったのに比べ、タスクと報酬とが切り離された犬は、後から同様に報酬をもらえることが分かっていようとも、自分が訓練を受けていない知らない装置を前にすると問題を解決しようとするのではなく、タスクを行うのをためらったり装置自体を噛んだりと、不満をあらわすサインを出していたそうです。つまり、報酬を得られるタイミングが、問題解決をするモチベーションを高めるためにも大切であることが示されています。これらの結果から、問題を解決するという作業は犬自身にポジティブ感情をもたらすこと、犬は問題解決の機会そのものに感情的に反応するということが示されたと研究者らはいっています。

問題を解決するときに感じる喜びや幸せを人も犬も同じように持っているのは、読者のみなさんならば百も承知と思いますが、この実験で興味深く感じたのは、報酬のタイミングをずらして比較してみたという点です。問題解決をすることにポジティブ感情を抱いても、効果的に褒めるタイミングは人と犬とでは異なることには、改めて気をつけてみるのもいいかもしれません。そして何よりも、愛犬を褒めるきっかけそのものをたくさん作っていきたいですね。

【参考サイト】
Psychology Today