ビタミンCと犬

文と写真:アルシャー京子

ヒトはビタミンCを多く含む食物を食べてきたため、体がビタミンCを作り出さなくなったそうだ。じゃあ犬の体の中でビタミンCが作り出されるのは、ビタミンCを含む食物を食べてこなかったから...?かもね。

ビタミンとは「生命の維持に不可欠ながら体内で合成できないため外部からの摂取が必要とされる物質」。ビタミンは発見された順にアルファベットで呼ばれているのが一般的だ。ヒトと同じくAやB群、DにEにHにKと犬にも摂取不可欠なビタミンはある一方で、犬の体ではビタミンCは作られるため厳密な意味ではビタミンとして扱われない。

にもかかわらず、今回は物質としてのビタミンC(=アスコルビン酸)と犬の体の関わりを見てみようと思う。

実はアスコルビン酸を体内で合成できる動物は数多い。逆にアスコルビン酸を作り出せない動物の方が少なく、アスコルビン酸を作り出すのに必要なL-グロノ-γ-ラクトンオキシダーゼという酵素、これが遺伝的に欠けているヒト・類人猿・モルモット・こうもりなどの動物ではアスコルビン酸を作り出すことができず、外部から摂取する必要があるのだ。

アスコルビン酸は体の中でタンパク質合成やコラーゲン合成に大きく関与するため、アスコルビン酸が不足すると組織を網状に繋ぐコラーゲンの合成が不安定となり、若干の機械的衝撃で粘膜表面が壊れて出血する壊血病が最初の症状として現れる。そしてコラーゲン合成が不安定になると傷の治りも悪くなる。

またアスコルビン酸はナイアシンやビタミンB6と共に脂肪の代謝に関与するL-カルニチン合成の鍵となり、体脂肪の燃焼を促進する。

犬の場合は1kg体重の当たり40mgのアスコルビン酸が体内で合成されると言われ、では自分でアスコルビン酸を作り出すことができるのだから、わざわざ与える必要はない?...かもしれない、もしも犬の体が過度のストレスや病気にさらされていないのであれば。

ここが時々気になるところ、だから今回テーマに上げてみた。

[photo from wikimedia commons]
春先のビタミンCの宝庫イチゴ。

例えば飼い主家族が喫煙者の場合、室内に分散する副流煙を受身で吸い込む犬の体には思わぬストレスがかかっている。あるいは闘病中、投薬の分解代謝に肝臓が忙しければアスコルビン酸が体に充分な量作られているかちょっと心配になる。「ダイエットしても体重が落ちない」「なんとなくいつもだるそうにしている」というとき、ちょっとだけアスコルビン酸に意識を向けてみてもいいだろう。

そうだ、疾患の治療法としてのアスコルビン酸の例も挙げてみよう。アスコルビン酸のコラーゲン組織を安定させる働きは関節炎やHD症状の改善に効果を上げているという報告があるほか、さらにはビタミンE同様に体内のフリーラジカル(活性酸素など)を捕らえ、特に癌予防として効果があると注目を集めている。これら以外でも手術の後や肝臓疾患にかかったとき、そして高齢となったときには食餌に加えてやりたいオススメビタミンだ。

食物と一緒に摂取したアスコルビン酸は腸で吸収され、血液によって体中に運ばれ代謝された後、腎臓を通って過剰な量は尿中に排泄される。しかし過剰に摂取することにより吸収される前に下痢の原因になったりもするので、一度に大量に与えるべきものではない。

コタツに入ってミカンや柿を食べる飼い主の姿を犬が見つめているならば、ひとつふたつ分けてやっても構わないのだ。お腹が下りさえしなければ。

(本記事はdog actuallyにて2009年12月18日に初出したものをそのまま公開しています)

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