なぜ警察犬がいて消防犬がいないのか? 〜世界の災害現場で活躍する犬たち

文:サニーカミヤ


Colorado’s Mountain Rescue Dog Squad(出典:YouTube)

近年、雪山に限らず、また山の高さにかかわらず、春も夏も遭難事故や転落事故などが起こり続けています。特に最近は、アウトドア系スポーツや登山者の数が年々増えていることから、消防署員や団員が山岳救助活動に出動する件数が増えると予測できます。

■参考
山岳白書:令和2年中の北アルプス登山者と遭難事故のまとめ岐阜県北アルプス山岳遭難対策協議会

この記事を書くに当たって日本における山岳救助のニュース映像をかなり見たのですが、救助する犬が出てきたところを見たことがありません。海外では、2000m以下くらいの山で起こったハイキング中の滑落事故やヘリコプターでの救助活動には、救助犬が活躍している映像がとても多いのです。

また、警察は警察犬を活用して、様々な捜査活動や犯人の抑制(逃走抑止や逃走犯の追跡・追い詰めなどの犯人が逃げる行動を犬が吠えたり、追いかけたり、咬みついたりして、制御する活動、すなわち護送、監守などのこと)などを行っていると思いますが、なぜ、消防には消防犬がいないのでしょうか?

以前から、災害指令を受けて、消防隊と一緒にすぐに出動できる消防犬がいても良さそうな気がしていました。

日本における消防犬が活躍できる可能性について:

  • あらゆる災害時での要救助者の捜索
  • 雪山等寒冷地災害時での要救助者の保温や心の支え
  • 大地震による倒壊事故、土砂崩れなどでの要救助者の場所の特定や励まし
  • 水難救助での要救助者の救助や曳航など
  • 火災予防広報活動や防災教育など
  • 被災者や家族の急性ストレス緩和、パニック予防
  • 動物救助(誘導、犬による犬の救助など)
  • 閉所に閉じ込められた要救助者に犬を進入させて状況撮影

以下に世界各国で上記の目的で働いている犬のビデオをご紹介します。

1、雪山遭難救助犬


Colorado’s Mountain Rescue Dog Squad(出典:YouTube)

特にスキーヤーやスノーボーダーの迷子のコースアウト客捜索、滑落者、雪崩出生き埋めになった要救助者の救出で活躍しています。冬以外にも、真夏のハイキング客の行方不明者捜索、山に迷った人の誘導なども行っているようです。

2、水難救助犬


Super Swimmer Dogs Save Lives: SUPERPOWER DOGS(出典:YouTube)

川に流されている犬や人の救助に犬を使ったり、ヘリコプターから飛び込んでの海で溺れている人の救助、海岸からの救助、流されていくボートの曳航や誘導など、活動は様々です。

3、子供たちの心を開き硬くなった心を和らげる犬


World’s Smallest Working Dog: SUPERPOWER DOGS(出典:YouTube)

一般的にセラピードッグとして認定&登録している犬ですが、被災した子供や家族、悲しみの心を開いてくれるような仕事をしてくれます。

4、火災予防広報で活躍する犬


Stop, Drop, and Roll & Get Low and Go!(出典:YouTube)

子供たちの気を引きつけ、一緒に遊びながら衣服に着火したときの消し方や地震の際にどうするか?火災の煙に巻かれたときには?など、最初に犬がデモンストレーションし、子供達にそのまねをしながら体で覚えてもらうなどの仕事をしています。

5、消防救助犬


Search and Rescue Dogs | American Dog With Victoria Stilwell(出典:YouTube)

土砂崩れ、水害での孤立、大地震による倒壊建物による生き埋め時に短時間で足場の悪い広範囲の捜索と要救助者の発見、進入ルートの誘導などを容易に見つけてくれる働きをします。

6、災害時捜索救助犬トレーニングセンター


SearchDogFoundation National Training Center (出典:YouTube)

そして、アメリカで唯一、あらゆる災害ケースを想定して訓練を行うことができる、災害救助犬トレーニングセンター。毎年、全米から70組くらいの各種災害救助犬とハンドラーがここでトレーニングを行っているそうです。

SearchDogFoundation

https://searchdogfoundation.org

犬は人間が持っていない災害対応能力を十分に持っていると思います。もちろん、犬のハンドラーや災害対応能力を向上させる継続的なトレーニングは必要ですが、これからさらに自然災害が増え続ける可能性のある日本の災害特性下において、また、山岳部や雪山、自然の多いエリアが管轄内にある消防署で、消防犬の採用を検討されてみてはいかがでしょうか?

■災害救助犬のトレーニングマニュアル

クリックしてTrainingDisasterSearchDogs.pdfにアクセス

同時に、やはり山にかなり詳しくないと、いくら体力のある消防士でも活動にかなりの困難を要するため、下記のようなセンターでの基本的な研修を定期的に受けられても良さそうな気がする。

長野県山岳総合センター

長野県山岳総合センター Home
長野県山岳総合センターは、長野県の教育機…【続きを読む】

これからも災害特性が変化していくと思いますが、近年の気象事情から自然災害、特に大水害と山岳事故は、さらに増えると言われています。

東京で行われている様々な災害関係の研修会などでお会いする若手の消防関係者からは、ほとんどの日本の消防本部では、新しいトレーニングを考えて実行したり、訓練システムや仕組みを考案したり、手法を変えたりということは簡単ではなく、なかなか着手しないそうです。

また、海外で学んできたことを紹介しても、いきなり、否定から入るか?変えなければいけない理由をさんざん聞かれた挙げ句、できない理由を並べ立てられて、結局何もしないなど。やる気のある人材は損気きさせられることがほとんどなので、せっかく研究熱心な若手消防職員が伸び悩んでいると聞きます。

もちろん、海外で行われていることが良いことばかりでもありません。それでも、もし若手隊員が何か新しい技術やアイデアを持ってきたときには、まずは、受け入れて、興味深く聞き、そして、可能な範囲で隊が一緒になって訓練に取り入れたりすることはできないだろうか?と心から思います。

そしてひいてはそのような取り組みが、助かる命を助ける活動へと繋がっていくのではないかと考えています。

本記事はリスク対策.comにて2017年4月5日に初出したものを一部修正し、許可を得て転載しています

文:サニー カミヤ
1962年福岡市生まれ。一般社団法人 日本国際動物救命救急協会代表理事。一般社団法人 日本防災教育訓練センター代表理事。元福岡市消防局でレスキュー隊、国際緊急援助隊、ニューヨーク州救急隊員。消防・防災・テロ等危機管理関係幅広いジャンルで数多くのコンサルティング、講演会、ワークショップなどを行っている。2016年5月に出版された『みんなで防災アクション』は、日本全国の学校図書館、児童図書館、大学図書館などで防災教育の教本として、授業などでも活用されている。また、危機管理とBCPの専門メディア、リスク対策.com では、『ペットライフセーバーズ:助かる命を助けるために』を好評連載中。
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