溺れているペットの助け方〜過去の洪水発生状況も把握しておこう

文:サニーカミヤ


[Photo by Markus]

これから雨が多い季節になってきますが、洪水などで流されたり、岸に上がれなくなった動物を見つけたら、あなたはどうしますか?

そんな時にはまず、自分の身の危険を「自分の身の安全」に置き換えてください。

とにかく大切なのは慌てて水に飛び込んで助けようとしないこと。泳げる人でも水温が低かったり、流れが強ければ、入水直後、思うように助けることができないばかりか、溺れてしまいます。そのためには、次に示すような行動にうつすことが大切です。

決して一人では行動せず、周囲の人など多くの助けを呼んで、集まった人それぞれの状況に応じて、以下のことをお願いしてみる
119番通報し、溺れている動物を目撃した場所や状況を迅速に伝える(消防が対応しない場合もあるが、通報したことを記録に残すこと)
流れていく方向に先回りしながら、口を結んだ状態で空気が入っているゴミ袋を複数集めてもらい、動物が流れてくるのを待って、橋の上などから投げてゴミ袋に掴まらせる。あるいは、ごみの集積所で使っているネット(カラスよけネット)にロープを結んで動物に投げるか、流れていく方向に先回りして、橋の上から垂らすなどしてネットにつかまらせる

119番通報したとしても、到着までに7〜8分以上かかるか、または、最初から出動してもらえない可能性もあります。一般の人が安全を確保した状態で、そこにあるものを使って救助するしかないことを考える、またはあらゆる状況を想像して選択肢を増やしておくことで、状況に応じた救助を行うことができます。

もちろん、ご自身の散歩コース動線上にあるものや日常の生活環境を前提に考えると、使える道具は限られてくるのかもしれません。が、動物に限らず子供を助ける方法としても、最低限、自分だったらこうするということをいくつかイメージしておくといいかもしれません。

また、濁流に流された動物を助けるためには以下の知識や物品が必要となります。

  • 水から助け上げた後の救急法(保温、CPR等)、観察法、搬送法
  • 予備のケージやリード、ハーネス、毛布、水、フード  など

1、気象情報を知っておく

気象庁が例年6月1日の気象記念日に発表している「気象業務はいま 2021」の「降水の将来予測」によると、地球温暖化に伴う気候変動により、さらなる災害の激甚化が懸念されているなか、近年は雨の降り方が局地化、集中化、激甚化してきており、これから洪水害が増加すると予測されています。

■「気象業務はいま 2021」(気象庁)
https://www.jma.go.jp/jma/kishou/books/hakusho/2021/HN2021.pdf

上記リンク先の資料にありますように、多くの豪雨災害を引き起こしている「線状降水帯」の発生等の的確な予測と監視、また台風とこれに伴う大雨・高潮等を高い精度で予報する技術などが進んでおり、ある程度は事前に被災状況がわかるようになりました。そのため、地域の洪水の発生予測など、日々の気象情報をチェックしていれば、近くの河川が氾濫する前に十分な準備を整えて、安全な場所へ避難することが可能となります。

雨が上がったあとは、川沿いは土手などがぬかるんでいたり、アスファルトの下が浸食されていることもあるため、犬が川に落下しないように気をつけるなど飼い主の安全配慮が必要です。

普段から天気予報はチェックされていると思いますが、地域によって具体的な堤防の場所や水位による危険度などを公表していますので、ご自身の住んでいるエリアの浸水ハザードマップなど、洪水害情報を調べてみてください。

下記で住所情報を入力すると地域の災害リスクを知ることができます。

■ハザードマップポータルサイト~身のまわりの災害リスクを調べる~(国土交通省)
http://disaportal.gsi.go.jp

2、取り残された動物の救助

一般の方々が濁流に流されていく動物を助けるのはかなり大変ですが、洪水害後に家や中州などに取り残された動物であれば、比較的簡単にレスキューできると思います。

下記のビデオをご覧ください。災害時のアニマルレスキューに必要な個人装備や捕獲用具などがわかると思います。


South Carolina Flood Cat Rescue (出典:Youtube)

では、レスキューした動物たちはどうしたらいいのでしょうか。アメリカではアニマルレスキュー時の活動レポートとして、「Animal Incident Report (AIR/動物事故報告書)」を助けた動物ごとに作成し、地域の動物管理センター等に連絡します。センターの収容状況を確認し、空きのあることを確認して、一時的に保護を依頼します。動物管理センターによっては、既存の動物事故報告書のようなものがあると思いますので、直接確認してみてください。

日本においては、環境省や各自治体が動物救護ガイドラインを作成しています。

■ペットの災害対策(環境省)
https://www.env.go.jp/nature/dobutsu/aigo/1_law/disaster.html

広域的な洪水害が発生すると消防、警察、自衛隊は行方不明者の捜索等を行いますが、公的な組織での動物のレスキューを行うのは状況によると思いますので、民間団体が行う可能性が高くなると思います。具体的な救助救急等レスキュー方法を指導したり、災害時の動物救助を行える実働部隊チームを編成している団体をもっと増やす必要があると思います。

そのためには、お住まいの地域で発生した過去の洪水害の被害状況などを研究し、日本で何ができるかをしっかりと先読みし、年間訓練計画などを作成して、活動を通じて成長させていくことが望ましいと感じます。

本記事はリスク対策.comにて2017年6月28日に初出したものを一部修正し、許可を得て転載しています

文:サニー カミヤ
1962年福岡市生まれ。一般社団法人 日本防錆教育訓練センター代表理事。元福岡市消防局でレスキュー隊、国際緊急援助隊、ニューヨーク州救急隊員。消防・防災・テロ等危機管理関係幅広いジャンルで数多くのコンサルティング、講演会、ワークショップなどを行っている。2016年5月に出版された『みんなで防災アクション』は、日本全国の学校図書館、児童図書館、大学図書館などで防災教育の教本として、授業などでも活用されている。また、危機管理とBCPの専門メディア、リスク対策.com では、『ペットライフセーバーズ:助かる命を助けるために』を好評連載中。
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