犬のインパルス・コントロール、うまいへたは遺伝か学習か?

文:尾形聡子


[photo by Philip Bump]

犬のさまざまな特徴や性質は、遺伝しやすいものとそうではないものとがあります。たとえば病気では、単一遺伝子病のように100%遺伝するものから、環境が原因となって発症する難聴などほぼ0%遺伝しない病気まで、遺伝の割合はさまざまです。

これまでに、特定の病気へのかかりやすさ、体の造りや行動について、遺伝が犬種間でどう異なるかの研究が行われてきています(最近の犬種による行動比較の研究については「犬種の作業特性と分離不安は関係がある?」で紹介していますのでご一読ください)。ただし、犬の特徴はそれらだけではありません。忘れてならないのは犬が人以外の哺乳類の中でも類稀なる高い認知能力を備えていることです。

犬は人との暮らしを通じてさまざまな認知能力を獲得し、進化させてきました。犬にどのような認知能力があり、それがどの程度なのかという研究こそ数多く行われてきていますが、中でもどのような能力が遺伝しやすいものなのか?というような体系的な研究はほとんどされていません。「人へのアイコンタクトの違いは個体差?それとも犬種差?」で紹介した研究のように、数種類の犬種に限って比較しているものが主流でした。ちなみに人では認知特性の遺伝率について数々の研究が行われていますが、2015年に発表された双生児での研究では、遺伝率が0.47、すなわち認知特性全体のおよそ半分が遺伝的要因によるということが示されています。

このような背景から、アメリカのアリゾナ大学の研究者らは「Dognition.com」というウェブサイトを通じ、一般市民から収集されたデータを利用して、犬のどのような認知形質が遺伝しやすいのかを調査しました。

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