文:尾形聡子
[photo by Nan Palmero]
犬の攻撃行動は人やほかの犬に危害を及ぼす可能性があり、飼い主にはとても深刻な問題です。世界的に、犬の攻撃性に対してポジティブトレーニング(陽性強化トレーニング)を行うことは今やもっとも効果的で人道的な方法と考えられています。しかしそれを必ずしもうまく実践できないケースもあり、そればかりか罰を与える方法でのトレーニング(犬の福祉を守れず、より状態が酷くなる可能性がある)がいまだに行われている現状もあります。
実際に飼い主が自らの犬の攻撃性を管理するためにポジティブトレーニングを行うかどうかを決める際、何が選択に影響を及ぼしてくるのかについて、これまで科学的な調査研究は行われてきませんでした。そこに着目した英国のブリストル大学の研究者らは攻撃的な犬を管理する方法の選択要因や、ポジティブトレーニングを行うにあたり何が壁となるのかを明らかにしようとし、その結果を『Risk Analysis』に発表しました。
飼い主心理からアプローチする初めての研究
研究ではオンラインアンケートを通じて、攻撃的な行動を見せる犬の飼い主630人から回答を得ました。アンケートは「防護動機理論(Protection Motivation Theory)」に基づいた17の質問から成り立っており、そこには飼い主の感情状態、社会的な影響、ポジティブトレーニングへの認識など、飼い主の心理的要因についての質問も含まれていました。