安心してる?それとも不安??子どもと一緒にいるときの犬の感情状態の読み間違いは、犬の飼い主により多い

文:尾形聡子 映像:藤田りか子

[photo by Erika Sievert]

小さな子どもと犬が無邪気に触れ合っている姿を見ると、ついつい無条件に頬が緩んでしまうものです。けれど、そんな子どもとの接触を、はたして犬は常に良しとしているものなのでしょうか?

世界的に見てもあとを絶たない子どもが犬に咬まれる事故。咬まれてしまう子どもだけでなく、咬んでしまう犬の両者を咬傷事故から守るためには、“犬がどうにも我慢できずに咬むしかない”というような状況下に置かないよう、周囲にいる大人がしっかりと監視する必要があります。しかしどんなに監視しようとも、犬のボディランゲージについてまったく理解がなければ事故を未然に防ぐのは難しいかもしれません。

実際のところ、私たちはどの程度犬のボディランゲージを正確に読めるものなのでしょうか?

トルコのアンカラ大学の研究者らは、犬の飼育の有り無し、子どもの有り無しで、ボディランゲージの解釈に違いがあるかどうかを調べ『Anthrozoös』に研究結果を発表しました。

研究者らは、子どもと犬が関わり合いを見せている映像3種類を用意。ボールの脇に横たわる犬にハイハイして近づいていく赤ちゃんなどの映像は、トレーナーでありドッグビヘイビアリストでもある専門家らにより判定され、いずれの映像の犬(ダルメシアン、ドーベルマン、ボクサー)も、感情的に不安定な状態で、怖がったり不安がっている様子が見られるとされたものでした。オンライン調査で行われたビデオ判定に参加した71人は、①子どもも犬もいる人、②子どもはいないが犬はいる人、③子どもはいるが犬はいない人、④いずれもいない人の4つのグループにわけられ、それぞれのグループが出した判定の解析が行われました。

その結果、全体では多くの人が、映像の中の犬はリラックスしていて(68.4%)自信がある(65.1%)と判定。映像の中での犬の行動は子どもと遊んでいる(23.0%)や友好的である(19.2%)との回答も。

子どもの有り無しでは、犬のボディランゲージの解釈の正確さに違いは見られなかったものの、犬の飼い主と犬の飼い主ではない人とで比較をしてみると、飼い主ではない人の方が犬の感情状態をかなり正確に読んでいる結果となりました。つまり、犬を知っているであろう飼い主の方が、犬の不安げな様子や嫌がる様子をリラックスした状態であると読み間違えしがちであることが示されたのです。

研究者らは、たとえ犬の飼育経験があっても、犬のボディランゲージについての理論的な知識を持たなければ、子どもと犬との間のやり取りで生ずる危険性を察知できる能力が高まるわけではないことを示唆するものだとしています。

おそらくはやはり、犬の飼い主は、犬は子どもに友好的であるという犬への信頼感から生ずる感情にとらわれがちになることも原因のひとつと推測できます。以前発表されたウィーン獣医大学の研究でも同様に、“ウチの犬なら大丈夫”と、咬傷事故の危険性について過小評価する傾向にあるという結果がでています。

そして研究者らが示唆するように、事故を防ぐためには犬の飼育経験の有無ではなく、攻撃のシグナルが何であるのかといったボディランゲージを正確に理解していることがカギとなってくるといえるでしょう。たとえば“しっぽを振っている=喜んでいる”という状況に必ずしもあるわけではない、ということです。

無言で微妙、犬言葉』で紹介されている以下の映像を見てみると、注意深くしていなければ簡単に見逃してしまうだろう微妙なボディランゲージを、藤田さんの愛犬ラッコが出していることがわかります。このような、大人でさえ気づきにくい犬のボディランゲージを小さな子どもたちが理解することはもはや不可能です。

「あっちに行って!」という微妙なシグナルをラッコが出しています。何回出されていたか、みなさん是非カウントしてみてくださいね。

防ぎようのない咬傷事故もときとして起こってしまうでしょう。しかし、防げる咬傷事故を未然に防ぐためには、咬まざるを得ない状況から犬を解放できるように、犬のボディランゲージについての正しい理解を社会的な教育の一環として広めていく必要があると感じています。

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【参考サイト】

Companion Animal Psychology