何もクリッカーを使わなくとも…?

文と写真:藤田りか子

クリッカーを使わずとも、褒め言葉とトリーツだけで犬のトレーニングは十分可能、という面白い結果がイタリアから発表された。【Photo by Matthias Ripp】

クリッカーのあの独特の「カチリ!」という音がマーカーとなり、犬は正しい行動をした瞬間を知る。クリッカートレーニングとは古典的条件付けとオペラント式学習のコンビネーションで犬に特定の行動を覚えさせる方法だ。さてクリッカーとくればシェーピング(犬が自発的に見せる行動を強化子で「抽出」しながら目標の一連の行動をつくっていく方法)なのだが、この方法である行動を犬に覚えさせる際、必ずしもクリッカーを使う必要があるのだろうか、をイタリアの研究者達は調査してその結果を論文として2016年9月に発表した。

クリッカートレーニングの良さの一つは、あの日常にはない金属的なカチリ音がマーカーになる点だと多くのクリッカートレーナーは主張している。が、その真偽のほどについて、学術的な証明は今までなされていなかった。いや、あの音でなくとも声でいいじゃないか、あるいはご褒美のトリーツだけでも十分じゃないのか…?

それを確かめるべく、研究者達は51匹の犬達(色々な犬種やミックス)を三つのグループに分けて、ブレッドボックス(パンを保存する容器)を開けさせるトレーニングを施した。一つのグループはクリッカーをマーカーに(クリック音の後にトリーツが与えらえる)してシェーピングを受けた。二つ目のグループは声で「ブラボー」をマーカーに(「ブラボー」と言ったの声の後にトリーツが与えられる)、そして最後のグループではマーカーを使わずにトリーツのみ。

結論から言うと、この三つのグループ内でトレーニング効果について、大差ないということがわかったのだ!実験に携わった研究者達にとっても、この結果は予想外であったそうだ。

【Photo by SonnyandSandy

となると、クリッカー・トレーニングって意味がないもの?

いや、私はそうは思わない。正しい行動をした瞬間に、どうしても瞬時にトリーツを与えられないトレーニングだってある。例えば遠隔で何かを触らせる時や、高いジャンプをトレーニングしている時など。それに、トレーナーや飼い主がオペラント式学習法を学ぶ際はやはりクリッカートレーニングを入門として手始めに行うと、理解が得られやすいと思う。

才能あるトレーナーの多くは、実はクリッカーという概念なしに、感覚的に正しいタイミングを捉えて、ご褒美を与えたり、罰を出したりして、上手にトレーニングをしているものだ。

となると、クリッカートレーニングというのは、優秀なトレーナーが無意識のうちに行っているトレーニングの方法をいわば一つの方程式として概念化させたものに等しいだろう。この方程式を知ることによって、その才能を持たない私たちのような一般の飼い主も、学習のメカニズムを理解して犬にトレーニングを与えることができる。犬の飼い主としては駆け出しであった20年前、私はクリッカートレーニングの教本を読んで初めてタイミングの重要性を知ったものだ。その後、どうしてもダンベルをくわえたがらない当時の愛犬、レオンベルガーのクマに、シェーピングで回収技を教えることができた。

レオンベルガーのクマはクリッカートレーニングによって物品回収を覚えてくれた。

最近トレーニングについて学術的な検証がどんどん増えている。これは、トレーナーにとってもそして我ら家庭犬飼い主にとっても嬉しい傾向である。

(本記事はdog actuallyにて2016年11月9日に初出したものを一部修正して公開しています)

【参考サイト】

Can clicker training facilitate conditioning in dogs?
In the attempt to verify clicker training efficacy in shaping dogs’ novel behaviours, we studied 51 domestic dogs. Learning was evaluated in three dif…