犬は加齢で近視に

文:尾形聡子

[photo by Quinn Dombrowski]

犬と人のものの見え方や病気には、同じところもあれば少しずつ異なるところもあります。これは加齢による目の変化に関しても言えることですが、先日『PLOS ONE』に発表された研究によりますと、人と犬で老化によるピント合わせへの影響が異なることが明らかにされたそうです。

アメリカのネスレリサーチセンターとミズーリ大学コロンビア校などの共同研究では、加齢により犬の目がどのように変化しているのかを調べるために、Welch Allyn SureSight という自動屈折計を用いて犬の視覚の状態(屈折異常)を計測しました。1歳から14歳までの、白内障にかかっていないビーグル9頭について、それぞれ各眼10回ずつ、そのうち5回は直接的な照明のもと、5回は間接的な照明のもとでの測定が行われました。さらに計測は6週間のうちの別の日に3回行なわれ、そのデータが安定していたことから犬に自動屈折計を用いることが可能だとわかりました。

解析の結果、1歳をすこし過ぎた犬2頭はほぼ正視(0D)あたりの値を示していましたが、加齢とともにだんだん近視が進んでいき、10歳と14歳の犬ではおよそ-2.5D となっていました。つまり犬は加齢にともない近視(遠くが見えにくくなる)になっていく傾向にあることが明らかになり、加齢とともに老眼(近くが見えにくくなる)になる人間とは逆の変化が起きていることが示されたといえます。また犬には、水晶体が老化して硬くなっていく核硬化症という加齢性の変化が見られるのですが、若い犬のほうがより水晶体が柔らかいことも確認されました。

[image from PLOS ONE]

人での検査にもとづき、屈折異常の程度(D:ディオプター)によりどのように焦点がぼけて見えるかを示したもの。これに犬の-1D から-3D が相当するのではないかと想定されるそう。

犬はわたしたちのように眼鏡やコンタクトレンズを使って視力矯正をすることができません。今回のこの結果を受けて、少し距離があるところから愛犬にハンドシグナルを出す場合には、なるべく大きなジェスチャーをするようにしたり、しっかり声がけするように心がけることが大切だと感じました。とはいえ加齢により衰えるのは目だけではなく、聴力も衰えていきます。さまざまな状況に対応していけるよう、ハンドシグナルと声の両方をつかって愛犬と意思疎通をはかれるようにしておきたいですね。

(本記事はdog actuallyにて2016年5月12日に初出したものを一部修正して公開しています)

【参考サイト】
Psychology Today

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