文:尾形聡子
読者のみなさんにはすでにお馴染となっているだろうホルモン、オキシトシン。麻布大学獣医学部伴侶動物学研究室の菊水健史教授が主導する研究チームにより、人と犬の絆、そしてオキシトシンとの関連性についての実験が新たに行われ、その結果が『Science』に掲載されました。
実験には家庭犬30頭と飼い主が参加し、30分間実験室での交流がはかられました。行動学的には見つめる行動をどれほどとるかが解析され、生理学的には交流の前後に採尿をし、オキシトシンの濃度の変化が計測されました。その結果、犬も人も見つめ合う行為をよくおこなっていたグループでのオキシトシンの尿中濃度が有意に上昇していることが確認されました。
次に人と親密な関係性をもつオオカミとその飼い主11組についても同様の実験が行われました。親密な交流がはかられていながらも、オオカミは飼い主の顔をほとんど見ないことがわかり、また、オオカミと飼い主いずれも交流後の尿中オキシトシン濃度の上昇はみられませんでした。
この結果から研究者らは、犬と人という異種間でつくられる絆は、オキシトシンと視線を介したコミュニケーションがポジティブ・ループにより促進されていることが明らかになったとしています。
簡単な研究紹介となりますが、こちらのサマリー・ムービーをご覧いただくことが、今回の研究の理解にもっともつながると思います。是非ともご覧ください。
Scienceでは今回の論文を受け、雑誌の表紙は犬の写真、さらには犬の特集が組まれるなど、そこからも反響の大きさがうかがえます。さらには『How well do you know your dog?』という科学的なクイズも Science のサイトで公開されています。英語でのクイズではありますが、犬のことなら頑張れそうという方はおためしあれ!
(本記事はdog actuallyにて2015年4月23日に初出したものを一部修正して公開しています)
【参考サイト】
・麻布大学プレスリリース