文と写真:藤田りか子
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犬愛好家としては絶対に見逃してはならぬ世界最大のドッグショー、英国はクラフト展に出向いて先日帰ってきたところである。ショーは東日本大震災が起こった前日の3月10日から4日間にわたって開催された。私が日本の惨状を知ったのはすでに何もかもが崩壊してしまい人々が騒然かつ唖然と状況を受け止めていた日本時間の11日夕方4時あたり。ショーの第2日目に向かおうと、朝のホテルの部屋で何気なくテレビをつけた時。BBCニュースから流される映像を見て、何か夢をみているのではないかと仰天した。津波によって家屋が車が泥の一部のようになって流されていた。
クラフト展2日目。ファイナルリング開催を目前に、日本の被災者に対して1分間の黙祷がささげられた。審査員一同が起立。
今回はあまり犬の話題に関係しないかもしれないけれど、少なくとも世界の犬愛好家がどれだけ、日本の震災に関心を寄せているのか、その状況をレポートしたい。クラフト展は、イギリスが数年前に犬のパスポートを受け入れるようになってから、いよいよ国際的になっており、世界各国の人々そして犬に出会える場となっている。当然、レポートをする関係でイギリスのみならず、オランダ、ベルギー、カナダ、アメリカ、エストニア、フィンランド、イスラエル、香港等さまざまな犬愛好家(あるいは出陳者)達と接する機会があった。その度に
「日本のあなたの家族や友人は、どうなのですか?」
とかならずインタビューの最後に聞いてくれたのが、心の救いであった。震災が起こった当日の11日、ファイナルリングにおけるショー開催前に司会者が言い渡したのは
「これから第2日目のクラフト展ファイナル・ショーが始まります。しかし、その前に日本で起きた惨事について、私たちは是非、黙祷をささげたいと思うのです」
最初に起立をしたのが審査員席の面々であった。そして全ての観衆が起立をして、1分間の黙祷をささげた。いろんな感情が沸き起こり、私は起立することができずに座ったままであったのだが。
クラフト展第3日目。すなわち3月12日のこと。プレスルームにて。ハンガリーの犬雑誌記者氏が、たわわなる腹をゆさゆささせながら、コンピューターの画面を見つめる私に問うてきた。
「知ってるかい?日本は6つの国からの災害救助を受け入れたそうだよ。僕の国からの災害救助犬は、お呼びじゃなかったけどね」
韓国、シンガポール、アメリカ、スイス等から救助隊が、数頭の救助犬とともに、日本に送り出された。彼自身も災害救助犬を訓練しており、国を代表して過去さまざまな国に出向いたそうである。現在ハンガリーにおいて使える災害救助犬は全部で6頭だそうだ。ハンガリーの災害救助犬が集っているfacebookの内容を見せてくれた。そこで、日本における災害救助への関心はピークである様子が伺えた。できるなら是非貢献したいのだ、とハンガリーの記者は語った。
クラフト展最後の日。ベストインショーの審査の前に、「四足の英雄」というタイトルの授与式が行われた。候補者は4頭。その中に、2010年1月に起こったハイチ地震で救助活動に活躍した黄色いラブラドールのエコーがいた。彼が登場すると同時に誰もが、日本の震災への救助活動に思いを馳せた。司会者はこう言った。
「イギリスから現在、数頭の救助犬が日本に出向いております」
今現在、救助犬の活動がどれだけ貢献しているのか、北欧に住んでいる私には情報不足でわからない状態である。誰か助けられたのであろうか。ニュースによると韓国の犬たちはスムースに日本に入れたにもかかわらず、スイスの救助犬チームは検疫の都合で足止めを食わされているとのこと。
(本記事はdog actuallyにて2011年3月17日に初出したものを一部修正して公開しています)