「競技会に強い犬」はどう育つ?〜 軍用犬の育成にそのヒントを探る その1

文:藤田りか子


[Photo by Pixel-Shot]

スウェーデンの軍用犬ユニットには、独自のブリーディングプログラムによって作業犬を育成する施設がある。ここで生まれたジャーマン・シェパードは、爆発物探知犬、警備犬、パトロール犬などとして働くことを目的として育てられる。当然犬たちは入念な選択交配を通して作られるのだが、それにもかかわらず生まれた犬のすべてが作業犬になれるわけではない。毎年およそ250頭の若犬が適性テストを受け、最終的に任務に就くのはそのうち3分の1弱。これら成功する犬たちとしない犬たちの差はどこにあるのだろうか?遺伝?それとも、何か育つ条件の差でもあるのか?

それを調べたのが2013年、スウェーデンのウプサラ大学、Helena Jonesによる研究だ。少し古い研究ではあるが、情報としては軍用犬だけではなく、スポーツドッグに関わる我々ハンドラーにとっても非常に参考になるものだと思った。というのも、Jonesは、軍用犬としての成功が、遺伝もさることながら、子犬のパピーウォーカー(里親)側の要因と関係していること、それがひいては18ヶ月後に受ける適正テストでの行動の現し方にも影響していることを明らかにしたからだ。

まずは簡単に軍用犬の育成の流れを説明しよう。子犬は軍用犬ブリーディング犬舎で生まれ、そこで8週齢まで過ごす。その後、全国のパピーウォーカー(里親)のもとに預けられる。里親はウェブサイトから募集。応募者は面接を経て適任と判断された場合に軍用犬ユニットと契約を結び里親になれる。預かる期間は、犬が18ヶ月齢になるまで。その間、里親は軍用犬コンサルタントによるトレーニングセッションを3回ほど受けることができる。18ヶ月齢になったら、犬たちは軍用犬としての適正テスト(気質テスト)を受けることになる。

この研究では、2005年から2010年の間に里親希望者が記入した申請書を収集し、その情報を犬の教育レベルや18か月齢で実施される適正テスト(気質テスト)の結果と結びつけて分析した。サンプルの対象となったのは、最終的に任務に就いたかどうかが確認できた犬、565頭である。なお、研究者はトレーニングセッションを受けた回数を教育レベルと名付け、それを1から3のスケールで表した(数が多いほど多くセッションを受けている)。

Jonesはこのデータに基づき

  • 教育レベルが成功率に与える影響
  • 里親要因と成功率の関係(どのような里親のもとで育った犬が成功しやすいのか)
  • 里親の特徴と適性テスト結果との関係

などを分析した。

成功に導く里親要因

解析の結果であるが、

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