冬至だ!かぼちゃだ!犬のお腹力をつける

文:藤田りか子


[Photo by Jamie Street]

10月31日も過ぎ、オレンジと黒に染まったハロウィーンが終わった。ハロウィーンを盛大に祝うのはアメリカだが、その波は徐々にヨーロッパにも広がりつつある。日本でも状況は同じだろう。ここスウェーデンでも年々、ハロウィーンのイベントが盛んになってきた。10月はそのために店先はかぼちゃがあふれたのだが、11月になり、売れ残りかぼちゃが一気に大安売りとなった。近くのスーパーではなんと1kg15円という安さに(それまでその20倍の値段だったのに)。

「よかった、ハロウィーンの前に買わないで!」

とほくそ笑むのは、たぶんかぼちゃが大好きな人か、犬にかぼちゃ食を与えたい人だろう。そう、もれなく私が後者の一人。もっとも日本だとかぼちゃといえば、冬至の食べもの。だから今も決して時期外れではなく、こちらのような叩き売りになることはないのだろうが..。

うちの犬たちにBARFダイエットを始めてからいろいろ食材に目が向くようになり、かぼちゃのよさにも気がついた(前回の記事では卵の威力について述べたが)。なにしろ栄養ばっちり、必須ビタミン、ミネラル、抗酸化物質がたっぷり含まれている。おまけに食物繊維が豊富、腸内環境を整え、下痢にも便秘にも効く。ひょっとしてかぼちゃって、スーパーフード?そもそもすでに夏に収穫しているかぼちゃを冬至に食べるという日本の慣わしも、健康と幸運を願うためであるらしい。

ラッコはもうすぐ13歳になる。カーリーコーテッド・レトリーバーの中でも彼はかなり大きい方で、この大型犬にしてこの歳まで元気で生きてくれているのは本当にありがたい限りなのだ。とはいえ8歳を過ぎたころから、ちょこちょこと小さな病気をするように。つい最近も、肛門腺に炎症、そして肺もやや炎症気味に。免疫力が確実に以前よりも衰えているのがわかる。だからこそ、かぼちゃの威力に預かろうと、安売りに乗じて少し買いだめをしているところだ。

野菜を買いだめしてもいたんでしまうのではないかと思われるかもしれないが、かぼちゃなら心配ない。調理して冷凍しておけば、いつでも使えるのだから!煮たら、皮ごとつぶしてピューレ状にしておく。それを製氷皿にいれてかぼちゃキューブを作って保存する。犬たちのお腹がやばいなーと思ったら(たいてい私は下痢でオロオロしてしまうのだが)、いつでもかぼちゃピューレを与えることができるのだ。

かぼちゃを犬に与えても大丈夫なのか?

もちろん。たいていの犬がかぼちゃ好き。サツマイモと並ぶ優秀な野菜系トレーニングトリーツにもなる。日本国外かかわらず多くの獣医師が下痢や便秘などの軽い胃腸トラブルを抱えた犬に対して勧めている。下痢と便秘に同時に効くというのは矛盾しているように聞こえるが、便秘の場合なら、食物繊維が便にかさを加え腸の動きを促すことで、排便を助けるから。そして下痢の場合だと、かぼちゃの可溶性繊維が腸内の余分な水分を吸収し、便を固めて腸を落ち着かせるのだ。

ちなみに、スウェーデンでは犬が下痢をするとたいてい「チキンの胸肉をお粥に混ぜて与える」を定番メニューとして勧められるのだが、とある獣医さんは「ご飯のかわりにかぼちゃのお粥の方がさらにいい」とアドバイスしてくれたことがあった。その際、かぼちゃはしっかりと煮てピューレ状にしておくことだ。


[Photo by Pixel-Shot]

食事一回あたりに与える量であるが、以下を目安に!

• 小型犬(〜7kg): 1回の食事につき 小さじ1〜2杯
• 中型犬(7〜15kg): 1回の食事につき 大さじ1〜2杯
• 大型犬(15kg以上): 1回の食事につき 大さじ2〜4杯

参考:The Ultimate Guide to Pumpkins for Dogs: Benefits, Feeding Tips, and Safety

そして以下がかぼちゃの栄養素とその主な働きだ。免疫力・消化・皮膚や被毛(または肌)の健康・老化予防といった基本的な健康効果は、犬と人のどちらにも共通している。

  • β-カロテン: 抗酸化作用あり。体内でビタミンAに変わり、視力と免疫機能をサポート
  • マグネシウム: 筋肉の働きとエネルギー代謝に重要
  • ビタミンA: 皮膚の健康、骨の成長、免疫反応、視力を維持
  • ビタミンC: 免疫力を高め、ストレス軽減にも関与
  • ビタミンE: 細胞を守る抗酸化作用を持ち、健康な皮膚を保つ

かぼちゃの種を捨てないで!駆虫剤にもなる、かも

かぼちゃを割ると、真ん中にはドロドロとした果肉とワタに絡まった種がびっしり。スプーンでかき出しても、掘れば掘るほど種が顔を出してくる。あれほど立派な大きさをしていながら、食べられるところは意外に少しなんだ、ということに気が付く。そして手元には山盛りの種が残る。


[Photo by nungning20]

これをローストして塩をかければビールのつまみにもなるが、たいていの人はそこまで手をかけることなく捨てるだろう。しかし、犬の自然食を考えているのであれば、かぼちゃの種は捨てずに、ぜひサプリメントとして活用したい!なぜなら、種にもこれまた素晴らしい栄養素がいっぱいつまっているのだ。主な成分はビタミンA、ビタミンB群、マグネシウム、葉酸、カルシウム、亜鉛、ナイアシンなど。

BARFの際に、どうしても骨の代替が必要であれば、卵殻でカルシウムを、かぼちゃの種でマグネシウムを補う、という方法もある。わが家では冷凍庫で骨が品切れしてしまった場合の非常用サプリとして使っている。とはいっても長期的な代用はおすすめできない。やはり本来の骨の栄養にはかなわない。そして言っておくが、種にはリンはほとんど含まれていない。

ただし種はそのまま与えないように!生のかぼちゃの種には、消化の際に栄養素の吸収を妨げるフィチン酸が含まれている。なので、種を12時間以上は水に浸すか、ローストすること。いずれの工程でもフィチン酸は分解できる。そして、コーヒー豆のグラインダーがあれば、粉砕させてパウダー状にして使うといいだろう。

かぼちゃの種には、さらなる秘密がある。科学的な裏付けはまだ十分ではないのだが、自然の駆虫剤としての効果があるそうだ。種に含まれているククルビタシンという成分が、市販の駆虫薬で使われているフェンベンダゾールと同程度の作用を持つとされているという。ククルビタシンは寄生虫の運動性を低下させ、腸壁に付着できなくする働きがある。その結果、腸内にいる条虫や回虫を体外へ排出してくれる。

使用する際は、かぼちゃの種をパウダー状に挽いたものを使おう。それを食事に混ぜて与える。スウェーデンの私のBARF師匠であるピッレ・アンデションさんによると、与える目安は体重10kgあたり、小さじ1を1日2回。便の中に虫が見られなくなるまで与える、あるいは1週間ほど続ける、もしくは2〜3日間、1日2〜3回与える方法がいい、とのことだ。

それから、かぼちゃの種を与えた次の食事の際には、細かくすりおろしたニンジンを加えるとよし。ククルビタシンによって麻痺した寄生虫が腸壁にとどまれなくなり、ニンジンの繊維がそれを絡めとり、外に排出してくれるのだ。

【参考文献】

The Ultimate Guide to Pumpkins for Dogs: Benefits, Feeding Tips, and Safety

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