文:北條美紀
[Photo by Humphrey M]
「犬は今ここに生きている動物だから、犬と一緒にいるとヒトのマインドフルネスも促進される」、そんな言説を耳にしたことがある方も少なくないはず。尾形さんの記事、「犬との暮らしに幸せを感じられないのはなぜ?〜研究が示した『今ここ』を感じる力」でもそういったテーマの論文が取り上げられていた。確かに、私の数少ない犬経験を振り返るだけでも、犬が私を「今ここ」に優しく連れ戻し、マインドフルネスを感じさせてくれたことを思い出す。犬がヒトを、日常の雑念から少し距離を置いた「今ここ」、いわゆるマインドフルネスに導いてくれるのは事実だと思う。
しかし、犬を「常に今ここにいる存在」と言い切ってしまうのは、最新の脳科学の知見からするとやや単純化し過ぎなきらいがある。
犬にもデフォルトモードネットワーク(DMN)がある
脳科学の研究では、ヒトの脳にはデフォルトモードネットワーク(以下、DMN)と呼ばれる領域があることが知られている。これは、何かに注意を集中していないときに働く脳神経系のネットワークを指す。DMNは、