文:藤田りか子
[Photo by Masarik]
パピーにBARFがいい、というのはフィンランドの研究からも明らかで、ラブラドール・レトリーバーの子犬のシャチを迎えたら絶対にBARFで育てると、決めていた。フィンランドからの研究については以下のリンクを参照にされたい。これら記事は私にとってはかなり大事な情報ソースでもある。



とくに最後に挙げた記事「炎症性腸疾患と子犬の食事の関係、生食それともドライフード?」は必読だ。私にBARFをすすめてくれたピッレ・アンデションさんも、ドライフードを食べている犬は一見元気で下痢がなくとも、多くはその腸には炎症を抱えている、と話してくれたことがある。
とはいっても、パピーのBARFは、栄養学の知識を持たない私にはちょっと敷居が高く思えた。分量を誤れば骨格の発育に影響が出るのでは、という不安もあった。でも勇気を出してやってみたのは、ピッレさんがパピーのためのBARF分量について記事をだしていたからだ。それを参考にしながら、そしてご本人にも直接相談しながら、実行してみた。
うちに来る前、シャチたち兄弟はブリーダーの元でドライフードをもらっていた。なので最初の1ヶ月間は、我が家でもブリーダーの方針どおり同じフードを与え続けた。ゆっくり成長させるための超大型犬種用のパピーフードだ。その結果、フードの袋に記されている分量通りに与えても、余分な肉がつかず、シャチはスリムな体つきを保っていた(多くのフードの場合、メーカーの言う通りの分量を与えていると太るものなのだが)。
ブリーダーのKさんは「速すぎる子犬の成長」を非常に恐れていた。成長が速すぎると、股関節や肘関節の形成不全を起こしやすくなるからだ。だからこそ彼女は我々がパピーを連れて帰るときに、こう念を押した。
「1年間はこのフードを与えて欲しいです」
これまでのパピーの経験からも、Kさんはそのフードに自信を持っていた。その言葉もあり、BARFに移行するのも最初は少々憚られたのだが、ある日意を決した。
70:15:10:5の比率
パピーBARFについても基本の考え方は成犬と同じである。筋肉(肉)、骨、内臓、野菜や果物を、それぞれの割合で与える。成犬の場合、70(筋肉部位):10(骨):10(内臓):10(野菜や果物)だが、パピーであれば、ピッレさんによると70:15:10:5が目安になる。ただし、筋肉部位の割合については、65%程度を推す意見もあり、情報源によって幅がある。したがって実践する際は、まずは専門家に確認し、犬種や将来の体格に応じて調整すべきである。
骨の分量については、パピーにおいては最初は15%が妥当ということだ。ここは成犬の割合(10%)と大きく異なる部分。なにしろパピーの体内では、骨・歯・関節の建設が急ピッチで進められている。特に カルシウムとリンは大量に必要で、これらは主に骨から供給される。その点、成犬ではすでに骨格が完成しているので「維持」目的で十分。パピーは「増築工事中」だからより多くの「建材=カルシウム」が必要となるというわけだ。
ただしずっと15%である必要はない。急成長期である生後6か月頃までは15%を維持し、その後は徐々に減らす。そして1歳になってから成犬の割合(10%)にしていく。今、シャチは6ヶ月齢を少し過ぎたところで、15%から13%に落とした。7〜8ヶ月齢になったら12%にするつもりだ。
1日の食事量
話は前後するが、そもそもどれぐらいの分量の食べ物を1日に与えるのか?なんと、最初の頃は、成犬のミミチャンやアシカよりも多かったのだ。
成犬の目安は 理想体重 × 2〜2.5% だが、パピーの場合は成長段階によって以下のように変化していく。
《食事量の目安》
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2〜4か月齢:体重の10〜8%(1日3回)
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4〜6か月齢:体重の8〜6%(1日3回)
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6〜8か月齢:体重の6〜4%(1日2回)
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8〜12か月齢:体重の4〜3%(1日2回)
たとえば、体重26kgのミミチャン(4歳)は1日620gを食べている。一方、シャチが5か月齢のときには約840g(14kg × 6%)を食べていた。
ただし!ケネルミーティングの際にKさんから
「ちょっと太りつつあるから、気をつけて!」
と言われてしまった(当時シャチは5ヶ月齢)。肋骨を触ると骨にいたるまで3〜5mmぐらいの厚みがあった。5mmまではまだ安全ゾーンではあるが、Kさんはとにかく急成長を嫌ったので、急いで食事量を減らした。今は600gにしている。この量は理想体重18kgに対して 3.3% であり、ちょうど8〜12か月齢の目安と同じである。ただし、これ以上増やせば太るのは明らかである。
というわけで、食事量の目安はあくまで参考値であり、BARFといえど実際の体型や状態を見ながら調整することが不可欠であることを今回学んだ。なお、量を増減させても、骨・筋肉・内臓・野菜の割合は変えずに維持するのが原則である。
(写真上)右の犬がシャチ。5ヶ月齢。この頃はややむっちり気味。
それから1ヶ月後。食事を減量。以前よりすこーしだけスリムに。子犬はむっちりしている方が確かに可愛いが、健康の敵!プロポーションはあくまでも成犬と同じであること。