イスラエルの犬事情

文と写真:藤田りか子

ご存知?イスラエルのケネルクラブってFCIに属しているんですよ!ここは、イスラエルの南部、ネゲブ砂漠の町、アラドにて。CACIBドッグショーが開かれた。こんな大規模なドッグショーは、イスラエルではおよそ年に2-3回ほど。

ヨーロッパ諸国で開催されている大きなドッグショーに取材で何度も足を運ぶうちにイスラエルのドッグジャーナリストであるYさんと友達になった。彼に「イスラエルにドッグショーの取材へおいでよ」と誘われた。イスラエルのドッグショーだなんて、そもそも純血犬種の世界自体が存在するとは思ってもみなかった故にこのお招きは驚きであった。

イスラエルはFCI(国際畜犬連盟)加盟国であるのは知っていた。そういえばドッグショー・ジャッジで有名な人もいた。だからショーが存在して当然なのだが、平均的な日本人の私にとって中東とはあまりにも地理的、文化的にも遠すぎてそこまで想像が及ばなかったのだ。

ヨルダン国境に近いある牧場にて。犬と子供と山羊と。なにもかも雑居状態!こんなのんびりした光景が繰り広げられているが、ちょっと向こうのヨルダン川国境地区では国境警備隊が武装して厳しく見張っていた。

Yさんのお招きから数ヶ月後、私は意を決してイスラエル、テルアビブに飛んだ。日常のイスラエルはテレビに映し出されているような、武装・軍隊・爆弾のイメージではなかった。少なくとも私が訪れた町、そしてタイミングに関して言えば、だ。地元の人々によれば、国境地帯にでも行かないかぎり、どこの都市でもごく普通の平和状態が繰り広げられているものだ、と。

全人口870万人。そしてその犬人口とは10万頭とも。1948年に建国されたものの、ユダヤ人の歴史は悠久。聖書の時代からのもの。古い文化ではあるが、アヴィさんという私にホームステイを提供してくれた女性曰く

「犬文化に関しては、西側諸国ほどイスラエルにはそれほど根付いないのですよ」

アヴィさんは、イスラエル・ケネルクラブでドッグショー、ジャッジ教育等、ボランティアのアシスタントを務める。この国の犬事情に詳しい。ちなみに、シルキー・テリアとシェルティの飼い主でもある。

「ユダヤ教では犬は不浄の動物としてみなされています。だから、我々ユダヤ人の中でも、オーソドックス派に属する人々は、犬を飼うということはまったくありません。そしてアラブ人も飼いませんね。イスラム教でも、犬は不浄の動物です。アラブ人が約2割を占め、そしてオーソドックス派が1割を占める、すなわち3割のイスラエルの国民は犬を飼う可能性がまったくないということです」

ただし聖書には「犬を飼ってはいけない」とは記されていないそうだ。だから最近では多少、犬への解釈が、オーソドックス派の間でも変わってきて、犬を飼うこともある。だが、それでも犬を人を扱うようにケアすることはまだタブー視されているとのことだ。

犬連れでエルサレムの街を歩いちゃよくないわよ、とアヴィさんは私の連れのロシア人に忠告していた。そのロシア人は、翌日イスラエルのアラドという砂漠の真ん中の町で開かれるドッグショーにコーギーを出陳する。

イスラエルの大都市、テルアビブにて。こんな風に犬を散歩している人にはよく出会った。公園では多くの犬がノーリードであった。

「犬を飼っているのは、我々みたいな、あまり宗教にこだわっていないユダヤ人、そしてクリスチャンです。そうそう、全てのイスラエルのユダヤ人が信仰深いと思われているようですが、実はそうでもないのですよ!」

ただし犬はユダヤ教の中で完全に否定的に捉えられているわけでもない。犬は吠えずに黙ってくれたおかげで、誰にも知られずユダヤ人がエジプトを脱出することができた、というくだりが出エジプト記に記されている。

1948年のイスラエル建国とともに、世界中に散らばっていたユダヤ人が入植してきた。犬文化をイスラエルに持ち込んだのは、そんな入植者達であり、主にドイツ、オーストリア系、そして東欧系のユダヤ人だそうである。そしてシオニズムを支持し建国を促したイギリス人も、イスラエルの純血犬種文化作りに貢献したのは言うまでもない。

で、その肝心のドッグショーは?というと…次回にもちこそう。

(本記事はdog actuallyにて2010年6月9日に初出したものを一部修正して公開しています)

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