文:藤田りか子
[Photo by dogphotos]
レオンベルガーを飼いはじめた頃、犬の飼い主としての私の自信はほぼゼロであった。ワーキングドッグクラブが開催しているしつけ教室では、ジャーマン・シェパードやタービュレンがたえず飼い主に熱いアイコンタクトを送っているのを見せつけられ
「ああ、なんと自分の犬とは違うんだ!」
と愕然としていたものだ。なにしろクマ(当時のうちのレオンベルガーの名前)ときたら、こちらが何をいっても明後日の方向を見ている始末。そしてインストラクターには
「あなたにリーダーシップがないからですよ」
とまで言われ、さらに自信喪失。そう、しばらくトホホな犬ライフを送っていた。そして当時私は「リーダーシップとはなんだろうか?」について真剣に考え、必死で答えを探そうとしていた。今でこそそのコンセプトもわかるようになり、一丁前にそれを人前で説明するようにもなったのだが、それには長い道のりがあったことを忘れてはいけない。
その目線の先には常に飼い主が… という犬種に憧れたものです。[Photo by Dürken Abb]
とはいえ、クマがトレーニングの度に「明後日の方向を向いていた」のは、本当に全てが飼い主のせいだったのだろうか?「リーダーシップ不足」と一刀両断されて、しょんぼりしている人は、きっと私だけではないはずだ。が、嬉しいことに最近は犬の認知学の分野での研究がさかんに行われるようになり(クマを飼っていた当時90年代ではとても考えられなかった学問だ)、必ずしも我々人側の問題とは限らない、ということがエビデンスをもって証明されるようになってきた。このような興味深い研究は最近いくつもあるのだが、2024年に発表された最新のものをここで取り上げて