文と写真:藤田りか子
[Photo by Martin Bauschke]
パリの五輪で出場を辞退したイギリスの馬場馬術選手シャーロット・ドュジャルダンのニュースは記憶に新しい。馬を何度も鞭打ってトレーニングしていた過去の映像が暴かれ、動物福祉を全うしていないということで自身の意思でオリンピック競技を辞退した。動物が関わる競技に参加する際に、ハンドラーが動物のウェルフェアを満たしている、というのは守られるべき倫理である。なにしろ競技に出たいと動物は言ったわけではない。あくまでも私たちの決断でありエゴでもある。だからこそ絶えず倫理が守られているかチェックしそれを貫かなければならない。
これはドッグスポーツの世界でもそのまま当てはまる。私が住むスウェーデンにおいて、競技会における犬の参加資格はウェルフェアの面での規制がある。そう、誰もがそしてどんな犬でもエントリーできるわけではない。ドッグスポーツだけではなくドッグショーにおいても同様のポリシーが適用されている。このようなウェルフェアに対する考え方は私がアドバイザーとして担当している日本のノーズワークスポーツクラブにおいても導入された。クラブではスウェーデンのノーズワークのルールを基礎としており、ノーズワークのみならず犬との付き合い方についても同じ哲学を適用したいと考えた上でのことである。
犬の健全性と競技会参加をウェルフェアの点からどのように解釈するかについては「ドッグスポーツ競技会出場停止と犬の健全性と行動 その1に書いた。本記事シリーズ2では、犬の気質およびハンドラーの振る舞いをめぐるウェルフェアについて記したい。
ミミチャンに言い渡された競技出場停止命令
うちの犬、ミミチャンは実は去年競技停止命令を受けていた。まずはそのエピソードから始める。
彼女が2歳になったばかりの初夏のある日、