人のストレス感情のにおいにより、犬は悲観的傾向になるかもしれない

文:尾形聡子


[photo by Nataliia Makarovska]

相手の感情状態を知ろうとするとき、人はその相手の表情や動き、あるいは喋り方や声のトーンなど、視覚あるいは聴覚から得られる情報を統合して判断しています。相手の感情状況を推し量るのに優先的に嗅覚を使おうとする人はまずいませんが、鋭い嗅覚を持つ犬は、視覚や聴覚から得られる情報だけでなく、化学的な信号(ケモシグナル:chemosignal)から得られる情報を日常的なコミュニケーションツールとして使用しています。

人の感情をケモシグナルでキャッチ

ケモシグナルによる動物のコミュニケーションは、通常、同種の個体識別や生殖行動(フェロモン)に使われています。ですが、犬は犬同士だけでなく、その優れた嗅覚を使って人の個体識別をしたり、人の感情状態とにおいとを結びつけて感じ取っていることが近年の研究により明らかにされています。

そのような研究の口火を切ることになったとも言えるのが「犬は人の感情を嗅ぎとり、その感情に影響されている」にて紹介した研究です。恐怖を感じた人の脇汗や呼気に含まれるケモシグナルを嗅ぎ取ると、犬もストレス行動を増加させ、逆に幸せを感じた人のケモシグナルを嗅ぐと、他者への社会的行動が促進されることが示されました。

しかしながら、子犬の人から発せられるケモシグナル認識は

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