犬連れで仕事をする

文と写真:藤田りか子


[Photo by JustLife]

夏の出稼ぎワークは犬といっしょに!

文を書くことを職業としているので、私の職場は家、すなわち自宅である。これは犬を飼っている身としてはとてもラッキーであると思っている。いつも彼らの側にいることができるからだ。取材をするにしても、いっしょに車に乗せて行くことができるし、移動中だって外に出して散歩をさせたりとかなり自由。都市のオフィスで働きながら犬を飼っている人に比べたら数段恵まれているだろう。とはいえ、犬を6時間以上留守にさせるのが止むを得ないという人は、そもそも犬を飼ってはいけないと思う。あるいは、犬の保育園(預かり)でみてもらうのがよし。このことについてはスウェーデン事情をいつかお話ししたいと思っている。

さて、夏になると私は出稼ぎに出る。パートナーのカッレはショップと森林機械のワークショップを経営しているのだが、そこで夏の長期休暇をとっている人のための代わりとして働く。スウェーデンの長期休暇は4週間ですよ、4週間!年間に5週間とってもいいことになっているのだが、たいてい皆夏は4週間お仕事をお休みする。

出稼ぎの仕事内容は事務とか商品管理なのだが、当然1日8時間は作業しなければならず、こうなると犬を家に置いていくのは不可能だ。しかし、私はラッキーである。カッレの会社はスウェーデンには珍しく犬連れをしても誰もとやかく言わない。なので、職場に犬を3頭ごと連れ出し、いっしょにいてもらっている。というか、彼らが私に付き合ってくれているという感じだろうか。

3頭ともでかい犬なので(いずれもレトリーバー)、一気にオフィスに来させるのは不可能だ。なのでお部屋には2頭あるいは1頭ずつ来てもらっている。残りの犬は車のケージにて待機。車もオフィスのすぐ外に駐車しているので、簡単にチェックしに行くことができるし、心配はない。

オフィスである商品管理の倉庫の一角に、犬が待機すべきコーナーを設けている。私がついているデスクから2mほど離れたところ。我ながら誇らしいのだが、その際ケージの持ち込みなど一切なし、リードフリー、ケージフリーで犬を待たせている。そこはやはり狩猟トレーニングで試練を受けているレトリーバーならでは、と思う。犬が望めば私がコンピューターに集中をして我を忘れている時に、するりと抜け出しあたりのにおいを嗅いだり、同僚やお客さんにちょっかいを出したり甘えたりすることもできる。が、ああ、さすが律儀なラブラドール・レトリーバー。決して動かない。そうそう、カーリーコーテッド・レトリーバーのラッコに関しては、こうまでパーフェクトではない、ということも付け足しておこう。ラッコはそういう面では、ま、いわゆるフツーの犬だ。


(写真上)倉庫兼オフィス。その隅を犬の居場所として待機してもらっている。一応段ボールシートを敷いている。その上にちゃんと律儀に居ようとしてくれるミミチャンとアシカ、略してラブラドールズ。


ラッコは所定の段ボールの敷物の上にいるつもりなのだが、このように体が大幅に敷物からずれている。ラブラドールのような「律儀さ」はなし!ラッコらしいキャラクターである。そうそう、ラッコには一応リードをつけている。しかしリードで体は束縛されていないので、好きな時に動くことができる。

ガンドッグとしての「オフスイッチ」が役に立つ

ラブラドールズのミミチャンとアシカはたいていいっしょに待機。同僚たちはいつも羨望の眼差しでうちの子達を見てくれる。

「えらいねぇ、ちゃんとここで待っていられるなんて。でもさ、あなたがどこかに行ってしまったら、それでもここにいられるかしら?」

とPさん。いやいや、もうそれは大丈夫です〜。というわけで私はトイレに行ったり、ショップで商品のディスプレーを整えたりしてしばらく席を外してみせた。10分後、それでもラブラドールズは同じ場所にて伏せをして待ち続けていた。

「うーん、すごいなー」

とPさんはうなった。ガンドッグとして修行した技が日常のこのようなシーンで見事に役に立つ。待つだけではなく、落ち着いて気持ちをオフにして待機ができる。このような気持ちの切り替えを持っているからこそ、鳥の回収犬になれる。なにしろレトリーバーは銃の火が吹いた後に活躍する犬。大事な場面(銃で狙いを定めて撃つ)で犬にガチャガチャされるとせっかくの狩猟が台無しになる。

とはいえ、ただ待たせるだけというのは不公平だ。もちろん家に帰ったら散歩はたっぷりするし休日は外にでてたくさんのアクティビティに精を出す。犬のニーズを満たしてこそ、犬も人のニーズに応えてくれるというものだ。


日頃ガンドッグのトレーニングで鍛えているミミチャンやアシカにとってオフィスの待機なんて、朝飯前!

スウェーデンの動物保護法があるおかげで…

スウェーデンの職場は早い。就業は朝7時!そのためには6時半にオフィスについていなければならない。朝の散歩をささっと済ませたら、3頭のうち1頭をオフィスに連れ出し、残りの犬たちには車で待機をしてもらう。そして朝9時のフィーカの時間に、私はコーヒーを飲まず代わりに犬をまた散歩に出す。スウェーデンの動物保護法には、犬をケージに入れている際は最低3時間に一度は外に出して、脚を伸ばさせたり排泄をさせなければならないとある。この法律を守るために犬を外に出しているのではない。だがこのような法律があるおかげで、うっかり長々と仕事をして犬の外出しがなおざりになったりしないで済む。こんな風に仕事の合間合間をくぐり、犬たちはだいたい2時間半ごとに外に出してもらえている。

それでもオフィスでじ〜っと待つのは本当に犬たちにとって退屈だと思う。なので、ときどき彼らにタスクを与えている。どんなタスクかって?それは次回までのお楽しみに!