文:尾形聡子
保護犬を迎えてみたもののどうしても反りが合わず、悩んで出した結論が返還だった…
譲渡の失敗は、犬と人の両方にとってマイナスの影響を及ぼしかねません。万全を期して準備して犬を迎え入れたものの、突如として飼育が続けられない理由が発生したために返還を決めた、というような人もいるはずです。譲渡の失敗は人の心に大きな傷を残す可能性があります。犬にとっては、多くの場合、家庭環境と比べて何かとストレスの多い環境であるシェルター生活に戻されることになります。
世界中で毎年何百万もの犬がシェルターに収容され、そして、その一部は里親に迎えられています。欧米の先進国では保護犬の里親になることは、犬と暮らす選択肢のひとつとして一般的になっているようですが、それでもすべての譲渡が成功するわけではありません。それは日本も同様だと思います。これまでの研究で、譲渡が失敗する割合は7〜20%と報告されています。ですが、もしかするとシェルターには返還せずに、ほかの人に直接譲ったり、中には安楽死という選択を強いる場合もないとは限りません。
アニマルシェルターにとって、譲渡の成功を増やしていくことは非常に重要な課題です。譲渡が失敗してシェルターに戻ってきたときには、その犬について理解を深める機会が増えると捉え、次の里親とのマッチングがよりうまくいく可能性が高まるとも言えます。ですが、シェルターの持ちうる力や限られた財源をより多くの動物を助けるために使うには、初回の譲渡が成功することがやはり大切です。譲渡の成功は、保護されている犬や迎え入れる里親だけでなく、シェルターにとってもプラスになることです。
その一助とするべく、犬の譲渡のされやすさなど、譲渡に関連する要因を調査した文献はたくさん出されていますが、譲渡後にシェルターに戻る可能性や、シェルターに戻るという結果に影響を及ぼすリスク要因に焦点を当てた研究はそれほど多くありません。そこでオーストラリアのクイーンズランド大学の研究者とクイーンズランド州王立動物虐待防止協会(RSPCA Queensland)の研究チームは譲渡の失敗のリスクを少しでも減らすことを目的として後ろ向き研究を行いました。
[photo by Mark Bonica]
譲渡が失敗するリスク要因は?
調査対象とされたのは