文と写真:五十嵐廣幸
オーストラリアではしっかりと犬を管理すれば、同伴を許してくれるお店も多い。
私はカフェや美容室、車のディーラー、アウトドアショップ、靴屋、アパレルのお店など様々な場所へアリーと一緒に行く。とあるアパレル店に初めて行ったとき、外で待ってもらおうとまずは店先の柵に彼女を繋ごうとした。私のそんな姿を見て店員さんは
「犬を連れて入ってもいいわよ」
と言ってくれた。今でこそこのお店の常連となったが、それでも毎回許可をもらってから、店内に連れていく。
一緒に店内に入ることができれば、外で待たせている犬を心配することなく買い物を楽しめる。これは、今までオーストラリアの多くの飼い主が公共の場で迷惑をかけずに行動をしてきた努力の賜物と言えよう。オーストラリアで享受できるこのフリーダム(自由)を大切にしたいと思っている。そのためには「失敗は決して許されない」ぐらいの強い意志と配慮が必要だ。通常犬連れである動物病院はもちろん、ドッグカフェ、ペットショップなど、犬と同伴することが許されているあらゆる場所においてもだ。
けれど、それでも失敗してしまうこともあるかもしれない。そんなときには、
「犬なんだからオシッコしちゃっても仕方ないじゃない!」
「他の犬のオシッコのにおいがしたから、マーキングしても仕方ない」
なんて開きなおったり逆ギレをしたりしてはならない。犬を連れている人は誠心誠意、謝罪をして弁償をする。そしてその失敗を二度と繰り返さないよう肝に銘ずる。我々飼い主は、犬を迎え入れてくれる店側の寛容さに甘えてはいけないのだ。
この美容室は犬を連れて入れるお店としてメルボルンで有名になった。
犬が店内で粗相をしてしまえば、商品を汚してしまうことだってあるだろうし、お店にもお客さんにも迷惑をかける。そしてその失敗は必ずしも金銭で解決できることとは限らない。店側と犬の飼い主全般の信頼関係を崩すこともあるはずだ。その結果、店側が「これからは犬を店内に入れるのは止めよう」という判断を下してしまったら?そうなれば、犬と一緒に買い物を楽しんできた多くの飼い主にも迷惑をかけてしまう。
犬を同伴している人は犬の排泄やマーキングのコントロールだけでなく、他のお客さんや彼らが連れている犬に対して興奮しないか、吠えないかということにも気を配るべきだ。さらに、お店に損害を与えたり、お客さんや店員を傷つけたりすることは絶対にあってはならない。店内だけではない。もし外に繋いでいる場合には、その場所でも迷惑をかけないようマナー管理を徹底する義務がある。
最近、東京から引っ越してきた小型犬の散歩をする機会がある。しかしその犬を店内に連れて入ることはしない。なぜなら彼には店内で粗相をするリスクがまだあるし、私が彼の排泄やマーキングのタイミングをうまく察知できないこともあるからだ。
ひとりひとりの飼い主がマナーを守り、失敗がない状態をずっと保っていけば、日本も将来、もっと多くのお店が犬に対してリラックスしてくれる社会になっていくはずだ。その未来を左右するのは飼い主、あなたの行動なのである。
文:五十嵐廣幸(いがらし ひろゆき)
オーストラリア在住ドッグライター。
メルボルンで「散歩をしながらのドッグトレーニング」を開催中。愛犬とSheep Herding ならぬDuck Herding(アヒル囲い)への挑戦を企んでいる。サザンオールスターズの大ファン。
ブログ;南半球 deシープドッグに育てるぞ
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