慣れるまで難しい?フワモコ犬のボディランゲージ

文と写真:尾形聡子


2015年のタロウとハナ。犬種としてはこのくらいの毛は決して長いほうではない。犬種スタンダードには全身の毛は均等な長さで、12センチ(毛を伸ばした状態で15センチ)が最長と記載されている。

先日「犬の表情から、フラストレーションを読み取るには?」という記事を書いた。そこで紹介した論文を読み、写真を見て、すかさず「ラブはいいなあ〜」と思ってしまった。なにしろ顔の表情を含め、ボディランゲージが見えやすいからだ。

小さい頃からいろんな犬と暮らしてきた。中には少し毛が長い犬(イングリッシュ・セターの雑種)もいたけれど、犬の動きや表情がわかりにくいほど毛量の多い犬はいなかった。スパニッシュ・ウォーター・ドッグ(以下SWD)は私にとって初めてのモコモコ犬であり、なんてボディランゲージがわかりにくいんだろうと感じた、初めての犬だった。

強い癖毛のSWDは毛がひたすら伸びていく犬種だ。伸びた毛はモコモコと広がるため体が膨張していくように見える。さらにタロウとハナを迎えたときにはまだ断尾が禁止されていなかったため、いずれも尾は短く、毛が伸びればあっという間に隠されてしまっていた。毛が長かろうが短かろうが、背中の毛は逆立つこともない。

顔はとりわけ顕著だ。毛が伸びれば体よりもより一層「正体不明感」は増していく。目が隠れるだけでなく、口元だってよく見えない。口角なんて最たるもの。耳ももれなく頭部と一体化し、丸い大きな頭としか認識できなくなる。

ただ、SWDは年に数回、全身を数ミリに丸刈りする犬種だ。それが幸いだった。そうでなければ彼らの「中身」がどんな様子になっているかを毛が伸びている状態のときに的確に想像するのは難しかったと思う。

毛を刈ると、動きは軽やかに見え、「ああ、タロウもハナもこんなに機敏な動きをしていたのね」と毎度感動していたものだ。そのくらい、同じ犬でもまったく違う動きに見えてくる。だから、毛刈り後、全身が毛に隠されるまでの間が勝負だった。犬たちがどんなときにどんな表情をしているのか、どんな動きの癖があるのかなど注意して観察するようになった。それを何度も何度も繰り返し、ようやく毛が長くなっても犬たちの出すボディランゲージを感覚として捉え、想像できるようになった。ちょっとした動きはほんのわずかしか見えてこないこともあるし、まったく動きとして出てこないこともある。ある意味、透視でもしているかのような気分になることもあった。

だから尚更、先日の論文のラブラドールの表情七変化を見て、「いつもこんな表情をダイレクトに見ることができるんだ!なんて羨ましい!」と感じてしまったのである。

フワフワモコモコした被毛の犬を飼っている人は、他のどのタイプの犬より一層犬のボディランゲージに敏感でいる必要がありそうだ。一般的なフワモコ犬はSWDとは異なり、常にフワフワモコモコとしたトリミングをしているだろう。目下大人気のプードルも、今やコンチネンタルクリップのようなスタイルをしている犬はほとんど見かけなくなってしまった。ただ、フワモコ犬も夏場に限っては毛を短めにカットしているかもしれない。そんな時こそチャンス!と思って、なるべく普段よりも犬のボディランゲージに注目してもらえるといいと思う。

ところで、私の友だちで犬は好きだけれど、扱い方がよくわからないという人がいる。そしてタロハナについては毛が長めの方が好みだと言う。それについて、きっとその友だちは犬に対して「どう扱っていいか分からないから、何となく怖い」という感情をどこかに抱いているからではないかと思っている。毛が長くなれば「怖い」と思わせがちな口元が隠れ、全体的な動きも鈍そうに見えてくるからだ。

そんなことも考えてみると、フワモコ犬の飼い主さんは他人のアプローチに愛犬が何を感じているか、ボディランゲージに常に敏感であって欲しいと思う。犬の扱いが分からずとも、散歩中にズカズカと近づいてくる人がいないとは限らない。とくに体が小さい犬のボディランゲージは、大きい犬と比べて相対的にも小さくなるから相手にも伝わりにくい。犬が「やめて」と言っていても、その人自身が「怖い」と感じないまま触ろうとしてくるかもしれない。

愛犬のボディランゲージを読み取り、いざというときに助けをだしてあげればそれは必ずや、愛犬と自分との絆づくりにも役立つはずだから。

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