文:尾形聡子
[photo by Aquarius Studio/shutterstock]
2020年の日本に暮らす犬の平均寿命は14.48歳(参考:ペットフード協会調べ)。そして、半数以上の犬が、犬のシニア期といわれる7歳以上に属しているという結果がでています。飼い主にとって、愛犬の寿命が長くなるのは嬉しい反面、老化による健康問題への対応が必要とされる場面も増えてきているのが現状です。
そのひとつに認知機能障害と呼ばれる病気があり、脳機能の低下により以下のような症状を見せるようになります(「最近集中してくれない・・・犬に見られる認知機能障害の徴候」参照)。
- 方向感覚の喪失:行くあてもなくブラブラしたり、心ここにあらずでひとところをジッと見つめたりする。
- 記憶の喪失:これまでに修得したコマンドに反応しなくなったり、トイレの場所を忘れたりする。
- 活動の低下:刺激に対する反応や、人や他の犬に対する反応が鈍る。散歩や遊び、食餌に興味を示さなくなる。一方で、ひたすらグルグル円を描いて歩き続けるなど、目的のない反復的な動きをするようになることもある。
- 睡眠パターンの変化:体内時計が狂い、夜は眠られずにそわそわとして、日中に眠ってばかりいるようになる。
- 吠えや鳴きの変化:これまでは声を出さなかった状況で吠えたり、夜鳴きをするようになったりする。
犬の認知機能障害は、人の認知症のひとつであるアルツハイマー型認知症の類似疾患と考えられています。人のアルツハイマー病はアミロイドβというペプチドが脳内に蓄積していくことで、脳細胞や脳神経が損傷を受けたり死滅したりし、認知機能に障害が出てくる疾患です。なぜアミロイドβが蓄積されてしまうのか、そのメカニズムは完全に解明されていませんが、アルツハイマー病発症の危険因子はいくつかわかっており、加齢そのもの、遺伝的要因、糖尿病や高血圧、肥満、食生活や運動習慣などが影響していると考えられています。
そして、昨今注目されているのが「歯周病」との関係です。