文:尾形聡子
[photo by Eric Sonstroem]
「遊び」はさまざまな動物種に観察される行動です。通常それは同種間によって行われるもので、捕食・反捕食にまつわる運動能力、社会的なスキル・絆、認知能力の向上などに長期的な影響を及ぼすものと考えられています。
とりわけ犬は遊びが好きな動物であり、皆さんもご存知のとおりとても重要な行動です。子犬の心身の健やかな成長に必須なばかりか、ネオテニー化した犬にとっては成犬になっても老犬になっても大切な社会的行動で、犬は生涯を通じて遊び心を持ち続けています。犬の遊びについてはこれまでに多くの研究が行われていますが、特に注目されてきたのが人との間に発生する遊び行動のメカニズムです。犬は異種である人と一緒に遊ぶ、つまり、人に注意を払ってそれに敏感に反応することができる動物ですが、それを可能にしている高い社会的認知能力は、犬が人との暮らしの中で進化させてきたものです。
そしてもちろんのこと、犬は同種の犬ともよく遊びます。多頭飼育ならば犬同士いつでも遊べる状況にあるといえますが、大多数は一頭飼育で、他の家庭の犬と遊ぶことになります。そのような場合には、基本的に犬たちの近くに飼い主やそれに相当する人の存在があるものです。人からのシグナルに対して敏感な犬たちは、自らが他の犬と遊んでいる最中に人の様子を察知し、何かしらの影響を受けているものなのでしょうか。