愛犬に拒絶されて傷ついたことはありますか?

文:尾形聡子

[HelloRF Zcool/Shutterstock]

生物種を超えて、人と犬が絆をつくることは決して絵空事ではありません。その特別な関係構築は、幸せホルモンとして知られるオキシトシンの研究からすでに実証されています。さらには犬との暮らしが人の健康を向上させたり、地域社会での交流促進をしたり、子どもの社会的情緒の発達にいい影響があるなど、私たちにさまざまなメリットを与えてくれていることが数々の研究により示されてきています。

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しかしながら一方で、それらのメリットは必ずしもいつも同様に人にポジティブな影響をもたらすものではない、またはまったくいい影響がないという結果も少なからずでています。かたや自尊心を高めたり前向きな気分でいられるなど精神面にプラスの影響をもたらす場合もあれば、もう一方でペットへの愛着レベルの強さとうつ的症状のレベルの高さとに関連性があるというアメリカの研究や、ペットの飼い主の方がペットを飼っていない人よりメンタルヘルス上の問題で苦しむ傾向があるというスウェーデンでの大規模調査研究もあるかと思えば、健康要因はほとんどペットと因果関係がないというフィンランドの長年にわたる追跡調査の研究まであるのです。

このような違いが結果としてあらわれてくる原因として考えられるのは、その犬と人との関係性の質が一様ではないということです。関係性がポジティブであればポジティブな結果を経験し、逆にネガティブであればネガティブな結果となる可能性が高まる傾向があるのはもちろんですが、対象者の選別方法や対象人数によって、このような部分が影響して研究結果にばらつきがでてくることはどうしてもあります。ですから、これまでの研究から一概には「ペットは人にメリットがある」とか「ペットを飼っていても意味がない」などと言い切ることができないのです。

いずれにせよ、ネガティブな相互作用を生み出すことになるきっかけのひとつには、社会的拒絶(排斥)があります。家族、友だち、学校や会社などの組織からの拒絶は人の心を傷つけ、心身に多大なるダメージを与え得るのは広く知られていることです。また人の場合、拒絶される対象が大切な人である必要はなく、見知らぬ人や社会全体からもダメージを受けることがわかっています。そして傷を受けた対象に直接的に攻撃的な意識を高めるだけでなく、そことはまったく関係のない人々に対してもその刃が向けられる可能性があることも示されています。

犬が家族の一員としての地位を確立しているいま、犬からの拒絶は人の家族からと同じようなダメージをもたらすのでしょうか。拒絶されることで受ける傷、そしてそこから生まれてくる攻撃感情というものは、人同士の社会だけの出来事なのでしょうか。研究の世界ではまだ未踏の地であるこれらのテーマについて調べるべく、

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