文と写真:サニーカミヤ
前回は、ペットの基本的な止血法、止血の基礎知識についてお話しました。とはいえ、いきなり止血が必要とされる状況になっても、読んでいるだけでは実行できないものです。いざという時に応急処置ができるようになっておくために、ペットの止血方法を練習しておきませんか。
以下、ぬいぐるみを使って、
①耳を咬まれるなどして出血した場合
②肉球を怪我した場合
③手根側部をケガした場合
の3つのケースについてインストラクションをします。ぬいぐるみなどを利用したり、もしくはご自身のペットに協力してもらうなどして(その際にはくれぐれもストレスがかかりすぎない範囲で)、練習してみてくださいね。
練習を始める前に
ペットの包帯法や止血法は、動物病院に搬送する前に施す救急処置です。まず傷口を水で洗い雑菌を除染してから、ガーゼや包帯を使ってケガの悪化予防や止血による血液の流出を止めることが目的です。
もちろん、体型などの個体差によって、必要なガーゼの大きさや包帯の長さが異なったり、飼い主や事業者が普段使っている道具等によっても救急処置の応用の仕方が変わってきますので、ここでは、あくまでも一つの方法としてご紹介いたします。
ですので、必ずしもこの方法が正しいというわけではありませんが、参考にして練習していただき、個体の種類や負傷部位に応じて工夫してやってみてください。
咬傷防止処置をしましょう
まず、ペットに噛まれないようにエリザベスやワンタッチマズル、口輪サポーター、包帯などで、咬傷防止処置を行ってから、ケガしている部位の止血、悪化予防処置を行います。
包帯を使って、咬傷防止処置を行うには、長さ1mほどの包帯の中央部を(肩幅ぐらいに)両手で持ち、ペットの後ろから口輪結びを施す準備をします。このときペットを施術者の大腿部で可能な限り保定すると、装着が容易になります。
なお、首から上に包帯を施す場合は、必ず、綿包帯を使用します。首や鼻腔への伸縮包帯使用は窒息などの事故を起こす場合がありますので、綿包帯、できれば、エリザベスや市販の口輪などの使用が安全です。
次に一重結びを作って、ペットのあごから鼻に掛け、鼻腔の上で口が開かない程度に結びます。このとき気をつけることは、強く結んでしまうと鼻呼吸ができなくなりますので、咬まれないための処置として口が開かない程度に調節してください。
次に鼻腔の上で、結んだ包帯の両端末を交差して、あごの下で交差させます。
あごの下で交差した包帯の両端末を後頭部に持って行き、蝶結びします。
①耳を怪我した場合の応急処置
まず、咬まれた耳を水で洗って、傷口を悪化させないように軽く叩くように水を拭き取ります。
次に頭の上にケガした耳を十分に保護できる大きさの清潔なガーゼを置きます。そして、ガーゼの上にケガした耳を載せます。
もう1枚のガーゼをケガした耳を挟むように宛がいます。
ケガした耳をガーゼで挟んだまま、綿包帯を施します。
反対側の怪我をしていない耳を挟むように交互に巻いていきます。
最後の端末は巻いた包帯の内側に入れます。
首が絞まりすぎていないか確認します。包帯を施した後は、ペットから目を離さないようにしましょう。
②肉球をケガした場合の応急処置
まず、怪我した肉球を水で洗って、軽く叩くように水を拭き取ります。
ガーゼを長方形に折って、爪を被せないように肉球を覆います。
脚と同じ縦方向に添って、包帯を2往復くらい施します。
脚に沿って2往復したのち、末端部分から、肘の方向へ、包帯を巻いていきます。伸縮包帯は締まりすぎることがありますので、強く巻きすぎないようにご注意ください。
最終的にはこのようになります。
③手根側部をケガした場合の応急処置
まず、傷口を水で洗って、軽く叩くように拭きます。特に他の犬に咬まれた場合などは、歯に付着していた雑菌による炎症が起こることがありますので、できるだけ、十分な水を使って洗います。
出血が止まらないようであれば、ガーゼを傷よりも少し大きく折りたたんで、軽く握り、圧迫止血します。可能であれば、傷口をペットの心臓よりも高い位置に保持しながら、圧迫止血します。
縫合が必要だと判断したら、軽く圧迫止血したガーゼの上から伸縮包帯を施しますが、強く絞めすぎないように注意してください。肉球が膨らんできたら包帯の絞めすぎですので、少し緩めてください。
いかがでしたか?
いざという時に慌てないためにも、皆さんぜひ練習をしておいてくださいね。
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文:サニー カミヤ
1962年福岡市生まれ。一般社団法人 日本防錆教育訓練センター代表理事。元福岡市消防局でレスキュー隊、国際緊急援助隊、ニューヨーク州救急隊員。消防・防災・テロ等危機管理関係幅広いジャンルで数多くのコンサルティング、講演会、ワークショップなどを行っている。2016年5月に出版された『みんなで防災アクション』は、日本全国の学校図書館、児童図書館、大学図書館などで防災教育の教本として、授業などでも活用されている。また、危機管理とBCPの専門メディア、リスク対策.com では、『ペットライフセーバーズ:助かる命を助けるために』を好評連載中。
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