文:北條美紀
[Photo by Adrià Ariste Santacreu]
「ポジティブという言葉の響きに流されないで」で、行動科学的な学習理論(強化理論)について紹介したが、今回は、人類学や精神医学の研究者グレゴリー・ベイトソン(Gregory Bateson)のいう、より幅広い概念を含む「学習」について説明してみたい。
学習には階層がある
ベイトソンのいう「学習」は階層をなしている。そのことに気づいたのは、彼がハワイの海洋研究所でイルカの研究をしていたときだ。調教師は、イルカが偶然にある芸A(例:ジャンプ)をしたときにエサを与える。何度か繰り返すと、イルカは、【イルカ】ジャンプ→【調教師】エサというコンテクストAを理解し、ジャンプという芸Aを学習する。この階層の学習を学習Ⅰ(原学習)という。
その後、調教師はイルカがジャンプをしてもエサを与えない。すると、イルカはジャンプを繰り返しては不満げな行動をとりながら試行錯誤を始める。そのうち