文:尾形聡子
[photob by Tim Watts]
ピンチのときには愛犬に駆けつけて欲しいという願いは、すべての飼い主が抱いているのではなかろうか。
飼い主を窮地から救いだしたり命を守ったりというようなヒーロー犬のニュースが世界中から発信されているのを、私たちはしばしば目にするものです。特別に訓練を受けた救助犬などではなく、ごくごく普通の家庭で暮らす犬たちがなぜそのような行動をとるのか、不思議に思ったことはありませんか?そしてウチの犬だったらどうなのだろう?と。
人間社会においてそのような行動は「向社会的行動」といわれています。向社会的行動とは「外的報酬を期待することなしに他人や他の人々の集団を助けようとしたり、こうした人々のためになることをしようとする行動である」と定義され(Mussen, & Eisenberg-Berg, 1977)、人間関係や協力を形成する基盤になると考えられています。自発的かつ無償で行われるボランティア活動や寄付、思いやり行動などがそれに含まれます。そして向社会的行動が生ずる主な要因のひとつに共感性の影響があると考えられています。
犬における他者(対犬や対人)への共感や向社会的行動については