反面教師とドッグ・トレーニング

文と写真:藤田りか子

インストラクターの模範演技だけではなく、参加者の失敗を見ることでも、犬トレーニング、大いに学べることがある。少しお金はかかるが、ぜひ、グループで行うドッグトレーニングに参加されたい!一生の知識の宝となる。

ドッグ・トレーニング・スクールを訪れるのは、トレーニングの仕方を学ぶ、というメリットのほかにも、いろいろな飼い主、そしてその愛犬たちを観察できるという絶好の機会だ。当然インストラクターの見せてくれる模範的なパフォーマンスや犬との絶妙な息の取り合い、を見習うのがコースに参加する意義でもあるが、一方で、犬との付き合い方が下手な人(つまり他の参加者!)を見ることでも、大いに学ぶことができる。ちょっと失礼かもしれないが、いわば、

「ひとの振り見て、我が振り直せ」

まさか、自分もあんなことをやってないでしょうね、と他人の振る舞いを自分にオーバーラップさせて、自己反省をしてみる。これは結構ためになる。いや、個人的には、インストラクターの模範的パフォーマンスよりも、説得力があると思う….。

私が以前取った日常オビディエンス・クラスには、二人、注目すべき面白い(?)人物、というか飼い主がいた。一人は、やたらとペラペラ喋る人で、もう一人は全く何もしゃべらない人であった。

前者は、女性のAさん、飼っている犬はフラットコーテッド・レトリーバー。後者はBさん。飼っている犬はジャーマン・シェパード。

やたらとピョンピョンする犬には、むしろ落ち着いた飼い主がマッチしているものだ。(写真と本文は関係ありません)

Aさんは、愛犬に対して明るく、よく笑う。インストラクターにはよく質問もするし、犬のトレーニングに実に一生懸命だ。が、どういうわけか、彼女と犬はマッチしていなかった。犬はやたらとはしゃぎ、時に制御不能の時もあった。

ただしAさんをよ~く見てみると、彼女の性格もあるのだろう、いつもその動作ががさついていて、荒っぽいことに気がついた。それに手を常にヒラヒラと動かすので、犬が余計に混乱をしているよう…、というか、Aさんのキャアキャアしたキャラクターのために、犬も気持ちを高揚させ、落ち着きを失っていた。

それを見ながら、一瞬、ハッとした。もしや、自分もあの人と無意識に同じことをしていたりして!Aさんみたいな手の動きをしているんじゃないか、と。

「そうだとしたら、いやだな、恥ずかしいな….」

というわけで、Aさんみたいにならないように(失礼、Aさん!)、その瞬間から自分の手の動きを意識するようになった。犬を困惑させてはいけない。声のトーンを落として、静かに合図を出さなければ。体をもっとゆっくり動かさなければ。

Aさんと比べると、インストラクターのC先生も明るいのだけれど、何事に対しても落ち着いており、物腰もしず〜かであった。心が高揚する、ということがなさそうで、常に、同じテンポで犬に接している。犬はこういう人が大好きだ。なぜって、わかりやすいからだ。人がはしゃぐ、というのは一瞬犬の気持ちを明るくするものだが、時と場合で使い分けをしなければならない。あるいは、犬の性格にもよる。特に新しい環境で何か学習させなければならないとすれば、高揚させてストレスをかけるのは逆効果だ。

(写真と本文は関係ありません)

さて、Bさんという人のジャーマン・シェパードはオスでやたらと周りを見張るタイプ。すぐに顔をBさんの脚の横や間から覗かせ、他のオス犬と視線を合わせようとする。インストラクターが、「あなたの犬、その動向に気をつけなさいよ!」と注意を喚起してあげているにもかかわらず、困ったことに、Bさん、すぐうっかりしてしまう。

そして、時に心はそこにあらずで、犬の「覗き見る」という動きを許してしまうのだ。犬は伏せをして静かに落ち着いて待っていなければならない時も、Bさんは、その犬が体を起こし始めることに対して、何もリアクションを起こさない。ぼうっと見たまま。他のオス犬に視線を合わせようと犬がいよいよ体を起こしたところで、初めて「あらら!」と反応する。Bさんも一生懸命クラスに通っているのだが、なかなか愛犬との関係が改善しない。

「そりゃそうだよ」

と、はたから見ている私たちには明らかなのだ。が、悲しいかな、Bさんには客観的な観点がないから、それが見えない。もちろん、私たちは本人から頼まれもしない限りは、Bさんに伝える必要はないだろう。それはインストラクターの仕事だ。

そしてここでもBさんの批判に徹する代わりに、まず己はどうか、と考えてみた。もしや、自分も同じようなことをしているために、なかなか関係が改善されないと悩んでいるのでは?「うっかり」を犬に許しているのではないか。

もちろん悲観的になりすぎる必要もないが、「他人の間違い」を〈こっそり〉見つけることで、自分を批判的に考えてみるのは、とてもいいトレーニングだ。これぞ反面教師。愛犬との関係というのは、客観的に見るのはなかなか難しいもの。ただしくれぐれも、聞かれもしないのに他人のしていることに批判的な事をいったり、それを態度として見せないように…。

逆に自分を客観的に見てみたい人は、誰かに動画を撮ってもらって、自分の愛犬との散歩の仕方とか、普段の接し方を観察してみるのも、一考だ。結構恥ずかしくて、見ていられないこともあるが、己を知る良い方法!

(本記事はdog actuallyにて2016年2月17日に初出したものを一部修正して公開しています)